学校のカバンを部屋の隅に放り投げると、
俺は急いで着替えを済ませ
二人の後に続いて、マンションの駐車場に置いてある車に乗り込んだ
俺ら家族の住む日本橋のマンションから
練馬のじいちゃんたちの家までは、
首都高を使って約30分
父さんがじいちゃんちの車の横に
自分の車を停めている間に
俺は小走りで玄関へと続く石畳みの階段を
駆け上がる
インターホンを押すとすぐに麗子さんが出て
「よく来てくれたわ、隼も…、
さあ、上がってちょうだい」
そう言うと俺たちをリビングへ案内した
「お義父さん、お部屋ですか?」
「ええ、さっきまで寝ていたようだけど、ちょっと見てくるわ」
麗子さんは一旦寝室の方へ行ったが、すぐに和の母親である霞おばさんと一緒に戻ってきて
「目を覚ましたみたい、あなたたちが来ているって伝えたら会いたいそうだから、
元気づけてやって」
じいちゃん、いったいどれだけ重体なんだ
マジで起き上がれんのか?
なんだか今にも…
いや、ダメだ、不吉な事は考えない
家の中はエアコンが効いていて
涼しいはずなのに、なんだか嫌な汗が出てくる
寝室に入るとじいちゃんはベッドから
体を起こしながら
「…フッ、彗か、家族総出で何事だ」
と、皮肉っぽい笑いを浮かべた
俺は少しだけホッとした
いつものじいちゃんだ
ただ、明かりのせいか、顔色が悪く感じる
麗子さんは
「ベッドから起き上がれないくらい具合が悪いのに
病院に行きたがらないんですもの
私がいくら言ってもダメだから、子供たちから
言ってもらうわ」
と言い、すかさず父さんも
「オヤジ、1度病院に行って、ちゃんと診てもらいなよ、顔色だって良くない」
「そうですよ、麗子さんだってほんとに心配してるし、どこが悪いのか、キチンと病院で検査してもらった方がいいです」
俺の両親は、代わる代わるじいちゃんを
説得し始めたが、当のじいちゃんは
「自分の体の具合は自分が1番わかってる
たいした事は無いんだ」
などと言って、聞く耳を持たない
「たいしたことないって、オヤジ、
好きなゴルフにも最近行ってないって
話じゃないか」
するとじいちゃんは、俺に視線を移すと
「ふふっ、隼も彗たちと同じ意見か?」
急に話を振られて俺は一瞬たじろいだ
当然、病院には行って欲しい
もし万一病気が見つかったとしても
現代医学で治る病気も多い
ただ俺は、じいちゃんがかたくなに拒否する理由を知りたいと思った
「自分の体の具合がわかってるんだったら、どうやったら前みたく元気になるかもわかるの?」
