「なあ、隼」
イベ帰りの京浜東北線で、蒲田始発に乗り変え
座席を一列占領した俺ら
隣に座った将真が小声で話しかけてくる
「…あんだよ」
俺がイベントで配布されたパンフレットを
見ながら、テキトーに返事をすると
「真由美って、誰かと付き合ってんのかな?」
どうやらそれまで他の連中は、
そういった男女間の付き合いについて、こそこそと話をしていたようで
「真由美?いや…」
特にいないんじゃないかと言おうとして、
それより先に将馬の隣にいた宗司が、
「あ、俺付き合ってるやつは知らないけど、真由美が好きなやつは知ってるぜ」
などと得意げに割り込んできた
俺は
おいおい
こういう風に将馬が聞いてきたって事は、
将馬自身が真由美のことを好きで、
場合によっては告っても大丈夫かどうかの確認を暗にしたかったってことだろう、
少しは気を使えよ
などと、内心苦々しく思ったが
当の将馬は
「え、誰誰?」
と、宗司の言葉に食いついた
「B組の野村ってやつだよ、でもまだ付き合ってはいないと思うぜ、って木下が言ってた」
結局、又聞きかよ
その情報確かなのか?
俺は将馬の気持ちを考えて、
思わずそう聞き返しそうになったが
将馬はなんだか納得したようで
「そっか、いや、俺は隼かと思ってて」
とだけ言うと、座席に深く座り直した
俺は
「は、んなわけねーじゃん」
と、返しておいた
真由美は確かにどちらかと言うとかわいい
ルックスの部類に入ると思うし、
割とはっきりものを言うタイプなので、
クラスでも目立つ方の女子、
常に誰かと一緒にいるムードメーカー的存在だ
どうやら将馬が真由美のことを好きなのは
間違いないらしい
それなのに、ライバルが仲の良い俺だと
ちょっと困る
そういったところだろうか
しかし、真由美のようなタイプを好きな男子は
ザラにいるだろうから
ライバルは多いと思うぞ
とは、あまりに余計なおせっかいなので
言わないでおく
誰と誰が付き合ってるとか、
受験に縁がないこともあって、
自分の推し活の自慢話とともに、
必ず上位に来る話題
俺も興味がないわけではないし、
どうすると子供が出来るか
なんてことぐらい知っている
だが中学生同士の交際など
それほど真剣なものであるわけもなく
せいぜいメッセージの交換や、手つなぎデート
と言ったところで、興味本位だったり、
ちょっとだけ大人ぶってみたいだけだったりで、
付き合い始めて、3ヶ月もすれば
また次の相手
そんな程度のふわっとした付き合い
さすがに女子の場合は、年上と付き合っていると、
手をつなぐ止まりでは無いようで
誰と誰は、もうヤってるとか
話題にのぼることはあるが、俺は
その辺の事、あまり詳しく知りたくない
てか、今どきこだわるか?
自分が初めての相手かどうかなんて
もっとも今はスマホを検索すれば、
AIがありとあらゆることを教えてくれるから
中学生 初体験
で、検索すれば経験者の平均年齢はわかるだろう
それが真実かフェイクかは知らんけど
そうやって、友達と遊んでいると
あっという間に短い春休みなど終わってしまい
最後の中学生活が始まる
◇◇◇◇
