バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

それから、あの人は不定期に姿を見せるようになった。

 毎回じゃない。
 配信の最初からいるわけでもない。
 始まってしばらくしてから、ふっと現れることもあれば、終わり際に少しだけ顔を出す日もある。

 でも、気づくと、どこかにいる。

 コメント欄の端。
 雑談スペースの隅。
 誰かの話に、短く相槌を打つだけの存在。

 目立つことはしない。
 流れを変えようともしない。
 必要以上に距離を詰めてくることもない。

 それなのに、不思議だった。

 いない日は、少し落ち着かなくて。
 コメントが流れているのに、どこか足りない気がして、無意識にスクロールを戻してしまう。

 いる日は、それだけで空気が柔らぐ。
 何か特別なことを言うわけじゃないのに、雑談が少し続きやすくなる。
 自分の声も、ほんの少しだけ軽くなる。

 名前を見つけるたび、心臓が一拍遅れる。
 胸の奥が、ぎゅっと掴まれるような感覚。

 自分でも理由は分からない。

 僕は相変わらず、配信を続けていた。
 特別うまいわけでも、派手な企画があるわけでもない。

 ただ、話して、笑って、少し弱音を吐く。
 今日はこんなことがあった、とか。
 ちょっと疲れてる、とか。

 誰かが聞いてくれたら、それでいい。
 そんな場所。

 ある日、背景を変えた。

 気分転換のつもりだったし、深い意味はなかった。
 いつもと違う色合いにして、カメラの位置を少し調整しただけ。

 コメントは、いつも通り流れていく。

「雰囲気変わったね」
「いい感じ」
「落ち着く」

 軽い反応に、軽く返事をしながら進めていた、その時。

「今日の背景、いいですね」

 ある日、そんなコメントが流れた。

 何気ない一言。
 丁寧で、少しだけ距離を測るような言葉。

 他の人なら、きっとそのまま読み上げて、流していたと思う。

 でも、その名前を見た瞬間、言葉が止まった。