バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

「ね、カラオケ……使えるみたい」

ぱちぇが、一瞬きょとんとする。

「歌う?」

「うん。
 一曲だけでも」

少しだけ、間。

ぱちぇは、困ったように笑った。

「俺、あんまり歌った事ないんだけど」

「知ってる」

だから、僕から言った。

「一緒なら、いいかなって」

その言葉に、ぱちぇは小さく息を吐いて、頷いた。

手元で少しだけ震えるマイク。
普段は見せない緊張が、わずかに姿を現している。

選んだのは、落ち着いた、ゆっくりした曲。

イントロの静かな音が流れ出すと、
部屋の空気が少しだけ二人の呼吸に沿って揺れる。

声が重なり、リズムを合わせる。
上手く歌おうとか、そんなことはどうでもよかった。

ただ、同じ空間で、
同じ時間を使っているということ。

それだけで、胸が温かくなる。

歌い終わったあと、
少し間を置いて、ぱちぇがぽつりと言った。

「……〇〇の声」

耳に残る言葉に、胸の奥がじんとする。

「落ち着く」

それだけで、気持ちが満たされていく。

「ありがとう」

短くても、全部を伝えてくれた気がした。
それ以上、言葉はいらなかった。