バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

「荷物、持つよ」

そう言われて、反射的に差し出した。

肩から外れたバッグが、ぱちぇの手に移る。
それだけなのに、妙に実感が湧いた。

あ、もう始まってる。

次の瞬間、視界の端に手が差し出される。

一瞬、意味が分からなくて。
でも、すぐに分かった。

「……」

何も言えないまま、そっと手を乗せる。

指が絡められて、
あっさりと恋人繋ぎになった。

思っていたより、手があったかい。
体温が伝わった瞬間、現実が一気に近づく。

心臓が、うるさい。

「行こ」

その一言で、足が動いた。

改札を抜ける人の流れが、一瞬だけ視界に入る。
知らない誰かの肩、足音、話し声。
でも意識はすぐ、繋がれた手に戻ってしまう。

コンビニは、駅のすぐ近くにあった。

手を繋いだまま入る、という選択肢しかない。

無理、近い。

でも、離す理由もない。

飲み物を買うだけ。
それだけなのに、頭が回らなくなる。

「えっと、なに飲む?」

「……あ、あの、これ」

早口になる。

それに気づいて、余計に恥ずかしい。

ぱちぇは急かすこともなく、
繋いだ手をそのままに、少しだけ楽しそうにしている。

手を引かれているわけでもないのに、
繋がっているせいで、自然と歩幅が揃う。

落ち着かない。

なぜか早足になる。

棚の前を通り過ぎて、
また戻って、
気づいたら同じ通路を二周していた。