バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

駅のホームは、いつもより音が多かった。

電車のブレーキ音。
アナウンス。
人の足音。

全部、普段なら気にも留めないはずなのに、
今日はひとつひとつがやけに耳に残る。

ベンチに座って、スマホを握る。

立って待つと落ち着かなくて、
座ったまま、何度も顔を上げた。

まだ、だよね。

時間は合っている。
遅れているわけじゃない。

分かっているのに、心臓だけが先走る。

画面の向こうでは、何度も声を聞いた。
笑い方も、間の取り方も、もう知っている。

それなのに。

本当に、来るんだ。

“会う”って決めた日から、
ずっと想像してきた瞬間。

でも、いざその場所に立つと、
現実味が追いつかない。

改札の向こうに視線をやる。
人の流れが、途切れてはまた増える。

知らない顔ばかり。

どんな服で来るんだろう。

昨日の通話を思い出す。

楽しみって言ってくれた声。
大丈夫って言ってくれた声。

それだけで、ここまで来れた。