バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

夜。
いつものように通話を繋ぐ。

「声、なんか落ち着かないな」

ぱちぇに言われて、苦笑する。

「ばれてた?」

「分かるよ」

少しだけ間があって、僕は観念した。

「……あのさ」

「うん」

「会ったら、渡したいものがあって」

言わないって決めてたのに、我慢できなかった。

「二つ、ある」

一瞬の沈黙。

それから、ぱちぇが柔らかく笑った。

「なにそれ」

「内緒にできないタイプだよな、〇〇」

「……うるさい」

「で? なに?」

「パウンドケーキと、ミサンガ」

正直に言うと、胸が少し軽くなった。

「サプライズじゃなくなったけど」

「いいじゃん」

即答だった。

「むしろ、楽しみ増えた」

その言い方が、優しくて。

「ありがとう」

「作ってくれる時間があったってだけで、嬉しい」

胸の奥が、じんわり温かくなる。

通話を切ったあとも、しばらくそわそわしていた。

ベッドに入っても、目を閉じても、
明日のことばかり浮かんでくる。

スマホでアラームを確認する。

……もう一度、確認する。

起きられるよね。

目覚ましをセットして、深呼吸。

「……寝なきゃ」

小さく呟いて、布団に潜る。

すぐには眠れなかったけど、
それでも、目を閉じる。

明日になれば、
画面の向こうだった距離が、現実になる。

その事実を胸に抱えたまま、
僕はゆっくり、眠りに落ちていった。