バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

夜、通話を切ったあと。

画面が暗くなって、
自分の顔が映り込まなくなった瞬間、
現実に引き戻された気がした。

部屋の中を見渡して、
いつもと同じ景色なのに、どこか落ち着かない。

ベッド。
机。
壁際に置いた荷物。

全部、変わっていない。
それなのに、この部屋にいる時間が、
もう「待つための時間」じゃなくなっている。

ぱちぇと会えるんだ。

そう思うと、胸がぎゅっとする。

この部屋で迎える夜も、
あと何回あるんだろう、なんて考えてしまう。

想像すると、嬉しさと同時に、
少しだけ寂しさが混ざる。

何を話そう。
どう歩こう。
改札を出たら、どんな顔をすればいい。

考える場所は、ここなのに、
意識はもう、外に向いている。

考えすぎだって分かってるのに、
止まらない。

スマホが震える。

「眠れそう?」

ぱちぇからのメッセージ。

「微妙」

正直に返す。

「俺も」

少しして、また来る。

「でもさ」
「こうやって眠れないのも、悪くないな」

「なんで?」

「ちゃんと会いに行く相手がいるから」

その一文で、胸の奥が静かになる。

遠い。
簡単じゃない。

それでも、
同じ“週末”を見ている。

この部屋を出て、
同じ時間に向かう。

ベッドに横になりながら、目を閉じる。

まだ触れていない。
まだ隣にもいない。

でも、距離はもう、数えられる。

会うまでの時間は、
不安も一緒に連れてくるけれど。

それ以上に、
ちゃんと前に進んでいる実感があった。

――あと、少し。

その“少し”を抱えたまま、
僕はゆっくり眠りについた。