バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

少し話してから、ふと聞いた。

「……そういえばさ」

「うん?」

「なんで、そんなに覚悟決まってるの?」

ぱちぇは、すぐには答えなかった。

沈黙が落ちて、
通話越しに、呼吸の音だけが聞こえる。

「……〇〇が」

本名を呼ばれて、背筋が少し伸びる。

「俺を選んでくれた時からだよ」

静かな声だった。

「その瞬間から、ちゃんと考え始めた」

何を、とは言わない。
でも、分かってしまう。

「一緒にいる未来があるなら、って」

「そのために、今できることをしようって」

胸の奥が、じわっと熱くなる。

「だから、少しずつだけど、貯めてる」

「別れたって聞いてから、じゃない」

「〇〇が、俺を選んでくれた時から」

その言葉が、ゆっくり沈んでいく。

僕は、何も言えなくなった。

泣きたいわけじゃない。
でも、息が詰まる。

選んだつもりでいたのは、僕の方なのに。
気づいたら、先に未来を持って立っていたのは、ぱちぇだった。

「……重くない?」

やっと出た言葉が、それだった。

少し笑う気配。

「重いなら、やめてる」

「でも俺は、重くない」

はっきりした声。

「嬉しいだけ」

その一言で、全部がほどけた。