バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

姿を知ってから、会いたい気持ちは、はっきりと形を持つようになった。

 写真の中のぱちぇは、思っていたよりもずっと柔らかい顔をしていて。
 画面越しに見てきた声や空気が、現実の輪郭を帯びた瞬間だった。

 互いの住所も、もう知っている。
 でも、それは「近づける」という意味じゃなかった。

 遠距離。
 簡単に会える距離じゃない。

 話している時間は、楽しい。
 笑って、安心して、幸せだと思える。

 それでも――
 通話を切ったあと、胸の奥に残るのは、触れられない寂しさだった。

 声じゃ足りない。
 言葉じゃ足りない。

 ただ隣に座るだけでいいのに、と思ってしまう自分が、少し怖かった。

 その夜も、通話は静かに続いていた。
 特別な話題はなくて、他愛のないやり取り。

 でも、僕の中で沈殿していたものが、ふと浮かび上がる。

「ね、ぱちぇたん」

 自分でも分かるくらい、声が弱かった。

「……僕さ」

 一瞬、言葉を探す。

「昔の話、してもいい?」

 向こうで、少しだけ間があった。

「うん。
 聞くよ」

 優しい声だった。

 だから、話してしまった。