バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

「でもさ」

 続く声は、低い。

「〇〇が前に出ると、
 俺は守られてる側になる」

「嫌?」

「……嫌じゃない」

 即答だった。
でも、

「それに慣れすぎるのが、ちょっと怖い」

 その正直さが、
 ぱちぇらしかった。

「対等でいたい?」

 そう聞くと、少し考えてから、頷く気配。

「うん」

「じゃあ」

 僕は、少しだけ間を取る。

「次は、一緒に迷おう」

 ぱちぇが、笑った。今度は、ちゃんと。

「それ、結構きつそう」

「でしょ」

「でも……」

 一拍置いて。

「一人より、マシだな」

 その夜、
 通話を切ったあと。

 僕は、
 「守る」という言葉を、
 何度も頭の中で転がしていた。

 守ることは、
 前に立つことじゃない。

 背負うことでもない。

 並んで、
 同じ速度で歩くこと。

 それが、
 今の僕たちにとっての、
 いちばん自然な距離なんだと思った。

 完全には、
 重なっていなくていい。

 でも、
 離れすぎない。

 影が触れるくらいの距離で。

 それで、
 十分だった。