バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

ある日、
ゲーム中に、
コメントが一瞬、止まった。

ぱちぇの声が、
ほんの少し低くなる。

「……今の、誰?」

画面の向こうの視聴者に向けた言葉じゃない。
通話越しの、僕に向けた声。

「え?」

「さっき、
結依にやたら話しかけてた人」

その言い方が、
少しだけ硬い。

「ああ、あの人?
前から来てくれてる人だよ」

「ふうん」

それ以上は、言わなかった。

配信は、そのまま続く。
ゲームも、雑談も、
何事もなかったように流れていく。

でも、
胸の奥に、
小さな引っかかりが残った。

それは、不快感というほど強くない。
ただ、
初めて見た一面だった。

次の配信では、
参加型にするかどうかを迷った。

結局、
「今日は雑談でいいかな」と言ったのは、
僕の方だった。

ぱちぇは、
少し安心したように「うん」と言う。

それを見て、
自分でも、少し驚いた。

合わせた、という自覚が、
確かにあったから。

恋バナ雑談は、
思ったよりも受けが良かった。

二人で話しているだけなのに、
コメント欄が盛り上がる。

「距離近くていい」
「空気甘くない?」
「聞いてて落ち着く」

そんな言葉が流れてくる。

ぱちぇは、
それを見るたび、
自分でも気づかないまま、少しだけ機嫌がよくなっていた。