バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

「昨日さ」

ぱちぇが、切り出す。

「あんなに長くやるつもり、なかったよね」

「なかったね」

「でも、切りたくなかった」

その言い方が、
少しだけ照れていて、
僕は、画面の向こうが見えないことをいいことに、
笑った。

「僕も」

即答だった。

沈黙が入る。
でも、気まずくはない。

「次、どうする?」

ぱちぇが聞く。

その問いに、
少しだけ、言葉に詰まる。

次。
簡単なはずなのに、
急に、輪郭が曖昧になる。

「……まだ、決めなくていいんじゃない?」

慎重すぎる答えかもしれない。

でも、
今は、それが正直だった。

「そっか」

ぱちぇは、否定しない。

「俺は、
結依のペースでいい」

その言葉に、
安心と、
ほんの少しの怖さが混ざる。

合わせてもらっている、という感覚。

それが優しさだと分かっているからこそ、
同時に、
いつか歪みになるかもしれない、という予感もある。

でも、
今は、まだ言わない。

今は、
楽しかった昨日を、
大事にしていたい。

通話を終えたあと、
僕はノートを開いた。

配信のメモを書くための、
いつものページ。

でも、
今日は、何も書けなかった。

代わりに、
ページの端に、
小さく丸をひとつ描く。

黒いペンで描いた、
不完全な円。

昨日、
確かに並んでいた。

その事実だけは、
消えない。

でも、
その輪郭は、
少しずつ、動き始めている。

まだ、ずれていると断言できるほどじゃない。
ただ、
完全に重なってもいない。

その曖昧さを抱えたまま、
僕は、ページを閉じた。