バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

少し遅めの朝食をとって、
紅茶を淹れる。

カップを両手で包むと、
ようやく体の奥まで、目が覚めてくる。

昨日の通話の声が、
まだ耳の奥に残っていた。

ぱちぇの声。

配信の中では、
いつもより落ち着いていて、
それでいて、少しだけ緊張していた。

恋人、という言葉を口にした直後の、
あの、微妙な間。

思い出すと、
胸の奥が、少しくすぐったくなる。

スマホが震えた。

画面を見ると、
ぱちぇからのメッセージだった。

「起きてる?」

短い一言。

少し迷ってから、
「起きてるよ」と返す。

すぐに、
「おはよう」と返ってくる。

それだけで、
気持ちが、ふっと緩んだ。

「昨日、大丈夫だった?」

その問いかけに、
一瞬、指が止まる。

何を指しているのか、
分からないわけじゃない。

配信のこと。
長時間だったこと。
疲れていないか、という意味もある。

でも、
それだけじゃない気がした。

恋人になったこと。
あの夜の距離。
一気に進んだ時間。

全部、ひっくるめての
「大丈夫?」だった気がする。

「大丈夫だよ」

少し考えてから、
そう返す。

嘘ではない。
でも、全部でもない。

「楽しかったし」

続けて送ると、
しばらくしてから、
「それならよかった」と返ってきた。

その一言を見て、
胸の奥に、
小さな安心が広がる。

それでも、
どこかに、ほんのわずかな引っかかりが残った。

安心していいのか、
まだ確かめきれていない何か。

言葉にするほどじゃないけれど、
確かに、そこにある感覚だった。