バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

「ね」

 気づいたら、口を開いていた。

 考えるより先に、言葉が外に出ていた。
 止めようと思った瞬間には、もう遅かった。

「もしさ」

 少し間を置く。

 息を整えるための間。
 覚悟を決めるための間。

「一緒に、やってみるっていうのは……どう?」

 言ってしまった、と思った。

 喉の奥が、ひりつく。
 取り消せない音として、空気に残ってしまった。

 逃げ場のない言葉だった。
 冗談にも取れないし、
 軽く流せる内容でもない。

 配信者と視聴者。
 そういう線を、はっきり越える提案。

 通話の向こうが、静かになる。

 ぱちぇが、何も言わない。

 いつもなら、すぐ返ってくる相槌もない。
 息遣いすら、聞こえない。

 心臓の音が、やけに大きく聞こえた。

 まずかったかな、と頭をよぎる。
 重すぎただろうか。
 距離を読み違えたかもしれない。

 急ぎすぎた?
 踏み込みすぎた?

 後悔が、じわじわと浮かんでくる。

「……それって」

 ようやく返ってきた声は、少し震えていた。

 戸惑いが、そのまま音になっている。

「俺と、〇〇で?」

「うん」

 即答だった。

 迷いを見せたら、余計に逃げ道を作ってしまう気がした。

「二人で。
 無理なら、断ってくれていい」

 本音だった。
 逃げ道も、選択肢も、ちゃんと残したい。

 これは命令じゃない。
 誘いだ。

 本音を出した上で、相手の意思を待つための言葉。

 また、沈黙。

 今度は、短くない。

 ぱちぇの側で、何かが整理されているのが分かった。

 驚き。
 戸惑い。
 それから――
 期待と、怖さ。

 その全部が、沈黙の重さになって伝わってくる。

「……正直に言うね」

 声が、少し低くなる。

 ふざける余地のない音だった。

「めちゃくちゃ、衝撃だった」

 苦笑する気配。

 自嘲と、照れと、動揺が混じった笑い。

「〇〇から、そんなこと言われると思ってなかった」

 胸が、ぎゅっと締め付けられる。

 拒絶じゃない。
 でも、即答でもない。

 その間にある感情の多さが、
 逆に、重く胸に残った。