バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

「ね」

少しだけ、間を置いて。

「絶対、変わらないよ」

誓うみたいな言い方じゃない。
思い込ませるためでもない。

「過去がどうでも」

「病気があっても」

事実として、並べる。

「それで、揺らがない」

自分に言い聞かせるようでもあり、
彼に伝える言葉でもあった。

「僕は、今ここにいる姿しか見てない」

画面の向こうで、空気が変わる。

しゃくりあげる音。

抑えていたものが、溢れた音。

「……ありがとう」

ぱちぇの声は、まだ少し震えていた。

「俺さ」

「久しぶりに、自分のこと話した」

ぽつり、と。
照れとも違う、戸惑いに近い声。

「誰かに、全部聞いてもらったの」

「たぶん、初めてだと思う」

その言葉が、胸の奥に落ちる。

特別になりたいわけじゃない。
ただ、“ちゃんと受け取った人”になった。

胸の奥が、静かに揺れる。

守りたいとか、救いたいとか、
そんな大きな言葉じゃない。

ただ、ここにいたい。

「ね」

僕は、ゆっくり言葉を選ぶ。

勢いで言ったら、壊れそうだった。

「これからも」

「隣にいていい?」

確認。命令でも、約束でもない。
選んでいいかどうか、の問い。

少しの間。

沈黙は、怖くなかった。
答えを探している時間だと、分かったから。

それから、

「……うん、隣にいてほしい」

短くて、確かな返事。
迷いが混じっていない声。

黒と白。
龍と蛇。

性質も、立場も、過去も違う。

違うからこそ、並べる。

この夜、
僕たちはまだ何も始めていない。

名前も、形も、約束もない。

でも――
もう、同じ場所に立っていた。