バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

これは、ただの絵じゃない。
 線の集まりでも、プレゼントでもない。

 僕が、彼をどう見ているかの答えだった。

 言葉にするには、まだ怖くて。
 でも、隠しておくには、正直すぎる感情。

 画像を送る前に、少しだけ迷う。
 重くないだろうか。
 期待させすぎないだろうか。

 これを受け取ったとき、
 彼はどう思うだろう。

 それでも、送った。

 送信音が、やけに大きく聞こえた。

 しばらくして、返事が来る。

「……ありがとう」

 短いけれど、詰まった声。
 言葉を選んでいるのが、分かる。

「白蛇、俺?」

 そう聞かれて、画面のこちらで小さく息を吸う。

 逃げ道は、もう用意していなかった。

 そう聞かれて、頷く。

「うん。
 そう見えたから」

 理由を飾らない。
 説明もしない。

 それが、一番正直だった。

 少し沈黙があって、
 その間に、心臓の音だけがやけに響く。

 そして、
 掠れた声が返ってきた。

「嬉しい」

 たった一言。
 でも、噛み締めるみたいな音だった。

 その一言で、胸の奥がほどけた。

 ちゃんと、届いた。
 変に歪まず、そのまま。

黒龍と白蛇。
違うけれど、並べる存在。

 守るものと、寄り添うもの。
 どちらが上でも下でもない。

 そんな関係性を、
 自分が望んでいることを、
 この絵ははっきり示していた。

でも、そのまま余韻に浸る気にはなれなかった。

 現実は、まだ終わっていない。
 むしろ、ここからが本番だ。

片付けていない現実が、まだある。

 言わなきゃいけないこと。
 向き合わなきゃいけない関係。

「ね」

 声に出す前に、少しだけ間を置く。

 今の空気を壊したくなくて。
 でも、逃げたくもなくて。

少し間を置いて言う。

「これから、大事な話をしてくる」

「今日は、もう話せないと思う」

 一瞬、向こうが黙ったあと、
 短い沈黙の向こうで、何かを飲み込む気配がした。

「……分かった」

「無理しないで」

 止めない。
 引き止めない。

 それが、彼なりの優しさだと分かる。

その声を聞いて、
通話を切った。