バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

前日の深夜麻雀の余韻が、思ったより残っていた。

 配信の準備をしながら、何度も昨日の場面を思い出してしまう。
 牌の音。
 笑い声。
 そして――呼ばれた名前。

 呼び方が変わっただけ。
 本当に、それだけのはずなのに。

 コメント欄に彼の名前を見つけるたび、胸の奥がわずかにざわつく。
 視線が、自然とそこに吸い寄せられる。

 だから――
 あの企画を思いついたのは、完全に勢いだった。

 深く考える前に、口が動いた。
 止める理由を探す前に、言葉にしていた。

「今日はね、視聴者参加型で麻雀します」

 配信開始早々、コメントが一気に流れる。
 画面が、勢いよく動く。

「お、麻雀?」
「参加型?」
「昨日の続きみたい」

 空気が一気に温まるのが分かる。
 僕は少し笑ってから、続けた。

「VC必須で。
 あと、罰ゲームあり」

 一瞬、間が空く。
 その沈黙が、妙に心地よくて、少しだけ焦らした。

「罰ゲーム?」
「なにそれ怖い」

 心臓が、トクンと鳴る。
 わざと間を取ってから、言った。

「一位の人が、僕に告白する」

 コメント欄が爆発した。
 一気に流れる文字、止まらない反応。

「は???」
「結依???」
「急に何言ってるのw」

 胸の奥が、じわっと熱くなる。
 言った瞬間に、引き返せないところまで来た気がした。

 心臓が早鐘を打つ。
 それでも、止めなかった。

「で、もし僕が最下位だったら……
 僕が一位の人に告白する」

 さらに騒がしくなる。
 冗談と本気が入り混じった空気。

「やばすぎ」
「攻めてるな」
「冗談でしょ?」

 冗談。
 そのつもりだった。

 深夜のノリ。
 前日の延長。

 でも、どこかで。
 画面のどこかに、あの名前が現れることを想像していた。

 “彼が来たらどうしよう”

 そんな考えが、胸の奥をよぎる。
 期待とも、不安ともつかない感情。

 参加者が集まっていく。

 名前を呼び上げて、VCに招待する。
 一人ずつ、音声が繋がっていく。

 その中に――
 彼の名前が、混ざる可能性を意識しながら。