バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

「なんか、夜にみんなでできることないかな」

 ふと、そんな声が上がった。

 雑談が続いて、言葉の間隔が伸びてきた頃だった。
 誰も退屈そうにはしていないけれど、空気が少しだけ停滞しているのを、皆が感じていたのかもしれない。

「雑談だけだと眠くなるよね」

「軽く遊べるやつなら」

 賛同する声が重なって、話題が少しずつ形を持ち始める。

 ただ話すだけの場所から、何かを一緒にする場所へ。
 その一歩で、空気は簡単に変わる。

 僕は画面を見ながら、迷った。
 参加型にすると、人の温度が上がる。
 楽しくなることもあれば、噛み合わなくなることもある。

 いつもなら、無難に流していたかもしれない。

 でも、今日は――。

 画面の端に、彼の名前があった。
 今も、静かにそこにいる。

 それだけで、少し勇気をもらった気がして。

「じゃあ、軽く遊ぼっか」

 そう言った瞬間、少しだけ胸が高鳴った。

 声に出したあとで、自分の鼓動に気づく。
 たったそれだけの提案なのに、不思議だった。

 何をやるか、具体的な話が進む。
 ルールが難しくないもの。
 途中抜けしても問題ないもの。

 誰かが候補を挙げて、別の誰かが補足する。
 雑談よりも少しだけ活発なやり取り。

 その流れの中で、誰かが言った。

「人数揃えば、麻雀とかもありじゃない?」

 一瞬、間が空いた。

 麻雀。
 深夜。
 少し大人びた響き。

 軽く遊ぶ、という言葉からは、半歩外れている気もする。

「重くない?」
「でも盛り上がるよね」

 賛否が分かれる中、僕は無意識に彼の反応を探していた。
 文字が流れるスピードが落ちる。

 そして、少し遅れて。

「……やるなら、付き合います」

 その一文が表示された瞬間、心臓が跳ねた。

 断ると思っていたわけじゃない。
 でも、どこかで“様子を見る側”だと思っていた。

 前に出ることも、流れを変えることもせず。
 ただ、そこにいる人。

 なのに。

 ちゃんと輪の中に足を踏み入れてくる。

 それが、妙に嬉しかった。

「じゃあ、今度ちゃんと集まる日にやろうか」

 誰かがまとめる。

 今夜は、下見みたいなもの。
 本番は、また別の日。

 軽く遊んで、解散。
 それだけの話。

 それでも、空気は少し変わった。