バイバイを書いた夜、君が来た ――あの夜、君の声が僕を繋ぎ止めた

 夜が更けると、言葉は少なくなる。

 それは、悪い意味じゃない。
 むしろ、余計なものが削ぎ落とされていく感じがした。

 配信中の明るさや、少し作ったテンションが、自然にほどけていく時間。
 無理に話さなくてもいいし、笑わなくてもいい。

 配信を終えたあと、いつもの場所に人が集まる。
 誰かが話し、誰かが聞き、気づけばまた誰かが抜けていく。

 チャット欄の流れも、少しずつ緩やかになる。
 言葉の間隔が伸びて、沈黙が増える。

 終電の時間。
 明日の予定。
 それぞれの現実に引き戻されて、人数は少しずつ減っていく。

「そろそろ落ちますー」
「明日早いので!」

 そんな挨拶が流れては、名前が消えていく。
 画面が静かになるたび、夜が深くなっていくのが分かった。

 気づけば、深夜。

 残っているのは、いつも同じ顔ぶれだった。

 派手に盛り上がるわけでもない。
 話題も、とりとめがない。

 でも、不思議と居心地がいい。

 沈黙が続いても、誰も焦らない。
 無理に何かを始めようともしない。

「夜になると、人変わるよね」

 誰かがそんなことを言った。

「分かる。昼より本音出る」

「テンション下がる人もいるけど」

 軽い雑談。
 深掘りする気もない、ただの会話。

 特別な意味はないはずなのに、僕は少しだけ身構えた。

 夜は、弱くなる。

 昼間なら流せることも、夜になると引っかかる。
 考えなくていいことまで、浮かんできてしまう時間帯だ。

 画面の端に、彼の名前があった。

 相変わらず多くは喋らない。
 でも、ちゃんとそこにいる。

 何か発言するたび、タイミングが絶妙で、空気を乱さない。
 必要以上に前に出ないし、引きすぎもしない。

 その距離感が、妙に心に残る。

 僕は、つい目で追ってしまう。

 誰かが冗談を言えば、短く笑う。
 文字でも分かるくらい、控えめな反応。

 話題が変われば、自然に乗る。
 無理をして話題を広げることもしない。

 そこに「いようとしている」感じがして。
 それが、なぜか安心できた。

 無理をしていない感じが、逆に安心できた。