もう一度、あの空を飛べるなら

しばらくして、泣きながら柚ちゃんが出てきた。


きっと、こっぴどく叱られたのだろう。


柚ちゃんのお母さんは、柚ちゃんと一緒に何度も頭を下げて謝ってきた。


そして、ラケットを弁償すると言ってくれた。


その時のあたしは、『お金は他人のために使うものではない』と思っていたけど、今では弁償するのが普通だとわかる。


弁償してもらった新しいラケットで、再び次の大会に向けて練習を始めた。


何度も何度も、同じ練習を繰り返す。


何度同じ練習をしても、飽きることはなかった。


そして次の大会も、そのまた次の大会も、無事優勝することができた。


その度にお父さんは、「俺の自慢の娘だ」って言ってくれる。


「日菜ちゃん、また優勝だって!」


「本当に凄いよね!」


優勝する度に新聞に載り、学校でもいい噂が流れ、街を歩くだけでも声をかけられる、まさにアイドルになった気分だった。


小学校では部活がなかったけど、中学校には部活があった。


あたしは迷わず卓球部に入部した。


あたしが通う中学校は卓球が強くて、大会でも毎回優勝していた。


けれど、あたしに勝てる者はいなかった。


先輩と戦っても、いつもあたしが勝っていた。


そんなあたしを、先輩たちは「すごい」「才能あり」と褒めてくれていた。


新人戦でも優勝できて、団体戦でもチームに貢献して…。


あたしの噂は一瞬にして校内に広まり、先輩や他クラスの同級生からよく声をかけられるようになった。


友達もたくさんできたし、卓球をしているとき以外の時間も楽しく過ごせるようになった。


それがとても嬉しかった。


あたしの卓球人生は、とても充実していた。


あの日までは…。