抱えきれないほどの愛に。

重い手でドアを引いた。


心も重くて、身体も重くて、



ぜんぶ、忘れたくなった。


出会った日も、幸せだった日も、


……ようくんのことも。


ゆっくりとドアを開けると。


そこには、いないはずの会いたくない人の影があった。


上なんて向けなかった。


息を呑んだ。


まただ。


苦しい。怖い。痛い。


何で、いるの。


「……何してた?ねぇ葉音、誰と居た?」


っ……。


ゆっくり顔を上げるけれど、その顔はうつむいているせいで前髪に隠れて表情が見えない。


綺麗な黒髪と彼の艶やかで低い声が今は恐ろしかった。


何で、彼はこんなにも感情が見えないのか。


はっきり言ってくれればいいのに。


私の事なんて、もう……っ捨てればいいのにっ…。