獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

「まあ、ブライスのこれまでを思えば、そこは納得するか。頑張れよ。もし、これから一人で生きて行くなら、泣き言など言っている暇はない。そんな暇があるのは、貴族だけだ。物陰でめそめそ泣いていても、飯は食えないぞ」

「……わかっています」

 ヴィルフリートの厳しい言葉は、確かにその通りだった。私がもし働いたこともない貴族令嬢であれば、この正論に傷ついたかもしれない。

 強い言葉だけど一人で生きることになった私を、励ましてくれているのかなと感じた。

「へー。良い返事だな。なあ、ブライス。立派な庭師になって、俺の部屋に良さそうな鉢植えの木でも育ててくれよ。出来るだろ? それだけのやる気があるなら」

「無理ですよ。私が担当しているのは、薬草の温室なんです!」

 彼の言葉に応えるのが一拍遅くなってしまったのを揶揄うようにされ、私は慌てて言った。

 あの温室には、城の治療室で使用する大事な薬草が揃っているので、誰かの私用で鉢植えの木なんて育てられないわよ。

「ははは。じゃあ、二日酔いの薬草でも頼むか。まあ、深窓のお嬢様育ちだからなー、期待しないで気長に待っとくわ」

「……! すぐにお礼に差し上げます!」

 ヴィルフリートは私のイラッとした言葉を聞いて、何故か満足そうにひらひらと手を振って去って行った。