獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 息をのんだ私を見つめるフロレンティーナの目は、明らかに敵意を剥き出しにしていて、私……いいえ、ブライス・ルブランから、婚約者含むすべてを奪うつもりであることを隠さなかった。

 それから……私には、もうどうしようもなかった。

 だって、私はルブラン公爵令嬢ではあるけれど、不思議な力を持っていない。美しくて清らかな聖女フロレンティーナは、意志の弱い者であれば行動を操作したり記憶を改ざん出来たりするだなんて誰が思うだろう。

 婚約者フレデリックは信じてくれない。両親だって、何を言ってるんだと思うだろう。それに、操作された人にも自覚はない。ただ、フロレンティーナに従うだけだ。

 そんな状況でも、多少は足掻いたことはあった。彼女の考えることの裏をかけたなら……と、けれど、そんな私の目論見をあざ笑うかのように、彼女は私を『悪役令嬢』にした。

 いつのまにか校舎裏で取り巻きのような令嬢たちが居て、フロレンティーナを囲んで虐めていることになっていたり、階段から落ちる彼女を目撃したと思ったら犯人に仕立てあげられたり。

 そんなことが続く数年間のどこかで、私はもうこの事態をどうにかすることを諦めてしまった。

 何をしても無駄。何をしても変わらない。フロレンティーナの思うとおりに事は進んで行く。

 ……早く悪役令嬢として、断罪されたい。