獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 元々、フロレンティーナの身体は聖女として選定されるほどに、不思議な聖魔力を保持していた。

 使い方を知る『誰か』が悪用しようと思えば、それなりのことが出来てしまうほど。

「このままだと、ストーリーがおかしくなってしまうでしょう。ちゃんと悪役令嬢しなさいよ」

「っ……! 貴女」

 愛らしい声で紡がれた言葉を、とても信じられなかった。

 私は出来るだけ『悪役令嬢』という身分から逃れたかったし、フレデリックとフロレンティーナがどんなに仲睦まじくても、特に反応することなく完全に無視していた。

 それは、フレデリックの婚約者としては、相応しい振る舞いではなかった。両親にも苦言を呈されたこともある。

 たかだか『平民出身の聖女風情を、良い気にさせおって』と。

 ……だって、来るべき断罪の日を避ける方法は、それが一番に手っ取り早かったのだ。

 コツコツと軽い足音が近づき、唖然とした私の耳に囁き声が聞こえた。

「聞こえなかった? ……ちゃんとしなさいよ。愚図。私と貴女の立場は、わかっているでしょう?」