08 ーHACHIー ~俺の彼女と私の彼~

 ユイはカザン・カードをめくるMathewを見つめる。
 Mathewが手にしているカードは「8」だ。
 ユイの視線を追ってミカゲもMathewが持つカードを見つめる。

「あれは君のこと」
「……「8」が? どうして?」

 ミカゲの視線がユイの薄くなった右手の印に向けられる。
 薄く出たり濃く出たり、ユイの右手の印は生きているかのように現れる。

「この印を僕らはミシルシと呼ぶけど、これは“希望”を示す「8」だからさ」

 右手のミシルシ。
 それが「8」。
 その意味は、“無限の可能性”。

 ミカゲによるとこのミシルシにはふたつの「2」とふたつの「4」が組み合わさっているらしい。
 それを紐解くと――。

 「12」という“希望”を意味する数字になる、とミカゲは告げた。
 
「ミシルシを持つ女性を、女王と呼ぶ。ミシルシはただのマーキングに過ぎないけど、守護者を導く存在だと言われている」

 ”世界の守護者はこのミシルシの女王と出会うために、観測を続けているのかもしれない”と、
 ミカゲは呟く。
 
 あの3月15日、AIコアに何もないはずのルシー・フェルドが何故か自分のそばにいた。
 当時は左手にあったミシルシ。
 これがただのマーキングであるなら、それは何のために?
 否。誰のためのものなのか。
 ――答えはもう出ていた。
 
「ミシルシ……私が女王ってことよね? ならこの女王って一体なんなの……」
「さあね。例えば君にしかない何かがあるとかじゃないかな」

 それを聞いてユイはふと思った。
 ……因子。特異な自分の因子が何か関係しているのではないかと。

 ユイが自分の因子について、簡単にミカゲに説明する。
 マイナスを抱えた中性因子。環境に応じて変化した特異な因子だ。
 ところがミカゲは既に知っている様な様子を見せた。

 「8」は“全ての始まり”の象徴である「0」を二つ抱えている。
 これが二つ重なることで“無限”になるという。

「……だから私はいつも失い続けるの?」

 その問いにミカゲは答えないが、逸らした視線は肯定していた。
 
(失い続けるのが私の因果だというなら、何が最後に残るというのだろう)

 細いチェーンで首から下げているヒロトのファミリー・リングに触れる。
 指に嵌められないけれどお守りにしたくて身に着けてる。
 ヒロトがたったひとつ遺した言葉が心に響く。

『ずっと君のそばにいると誓う』
 
 それはヒロトの言葉。
 どうしてその言葉が響くのか、答えはもうわかっている。
 分かっていてもユイは否定することしか出来ない。

 否定をやめてしまったら。
 最後に残るのは希望さえも残らない永遠の「8」だからだ。