この世界アゼリアには5つの大きな海がある。
今から数年前に、あるリージョンから漁に来ていた漁師が小さな小島を見つけた。
その小島に上陸してみると、かつて人が住んでいたような廃墟があった。
漁師はこの島の静止画を撮り、“海の孤城遺跡”というタイトルでSNSにあげた。
それがニュースになったのは、ユイがまだ学生の頃だ。
“海の孤城遺跡”の島を一目見ようと、多くの人間が海洋を旅した。
しかし、画像の|偽造防止刻印≪フェイクガード≫を頼りに島が撮影されたポイントに行っても、影も形も無い。
結局その島は発見されないまま終わった。
やがて人々はその島を”神”が住まう島と考え、神の怒りを恐れて島の捜索をやめた。
だが“神の島”を見つけた者は、生涯幸運に恵まれるとさえ言われた。
最初に世界にこの島を公表した漁師は高額当選のくじで、巨額の富を得たからだ。
―*―
カイドウ家本邸。
ユイは青い私室で、ミカゲの独白を聞いていた。
その間、Mathewはミカゲが持参したカザン・カードに触れている。
カザム教では、カザン・カードの意味が重要な意味を持つそうだ。
細長いカードには様々な数字が書かれたカードが24枚ほどある。
例えば「2」は、同じで異なる存在が一つになるという意味合いを持つ。
そして「0」は、全ての始まり。では「8」は――。
Mathewは、本を片手にカードを静かに見つめていた。
その間、ミカゲはユイの質問に答えていた。
あなたについてと、カザム教について知りたいと、ユイがミカゲに告げたからだ。
ミカゲが語り始める。
そのすべては、誰も知らない“世界”について。
このアゼリアに守護者がいることを、彼が知ったのは4歳の時だった。
当時は違う名前を持っていた、マガミ家一族の末端に位置する家庭の子供だったそうだ。
“先代のミカゲ”によって選ばれるまでは。
”君が新しいミカゲ・カイ・マガミだ”
元々の名前にミカゲという名前が上書きされた瞬間だった。
それ以前の名前も一切の因果も消去された。
両親はあっさりと彼を手放し、他のリージョンに移り住んだらしい。
「子供の頃に継承されて良かったよ。名前も役割も当たり前で育つ方が楽だからね」
ユイはただ黙って聞いていた。
腕に抱いたユーリだけは、語り部であるミカゲの赤紫色の目をまっすぐに見つめていた。
「ユーリ・カイ・リア・カイドウ……僕の正式な主……。本物の、綺麗な紫色の目だね」
元々ミカゲの目は深緑色だったそうだ。
それをわざわざ成人してから赤紫色に変えたのは、先代のミカゲが亡くなったからだ。
その瞬間から彼は“ミカゲ・カイ・マガミ”となった。
ユイは素朴な疑問を口にした。
どうしてあなたはミカゲに選ばれたのか、と。
すると“ミカゲ・カイ・マガミ”を名乗る存在は、ある特異な能力を持つからだという。
この能力は世界の守護者によって与えられたもの。
これにより“ミカゲ・カイ・マガミ”は、世界の守護者の“御使い”となる。
「マガミ家には『表』と『裏』の当主がいる。僕は『表』の当主なんだ」
『裏』のマガミ家当主は、ある場所から動くことが出来ない。
だから『表』のマガミ家当主が必要なのだという。
『裏』のマガミ家当主、つまりは世界の守護者。
カザム教の、過激派組織”グライゼル”が狂信するという、“神”シュゼルト。
そのワードの謎を一つ一つミカゲに教わる。
世界の守護者こそグライゼルが信じる“神”であるということがわかる。
カザム教における“神”シュゼルト。
それが世界の守護者であるが――。
ミカゲはこの“神”は最初から“神”であることを放棄しているという。
「守護者がこのアゼリアに存在してから数千年余り。長い歴史の中で彼は一度も自ら“神”を名乗ったことはない。彼は観測者であり、世界を守護する者に過ぎない」
「……神ではないのに、神として崇められるようになってしまったということ?」
「そうだよ」
守護者はただ世界を守護するために、観測を続け、存在している。
世界の中心にあるといわれる“世界樹”の傍で。
数千年に及ぶ年月は現在もなお続いている。
そう考えるだけでユイは眩暈を感じ、自身が踏み込んだ領域の重圧に押しつぶされそうになった。
今から数年前に、あるリージョンから漁に来ていた漁師が小さな小島を見つけた。
その小島に上陸してみると、かつて人が住んでいたような廃墟があった。
漁師はこの島の静止画を撮り、“海の孤城遺跡”というタイトルでSNSにあげた。
それがニュースになったのは、ユイがまだ学生の頃だ。
“海の孤城遺跡”の島を一目見ようと、多くの人間が海洋を旅した。
しかし、画像の|偽造防止刻印≪フェイクガード≫を頼りに島が撮影されたポイントに行っても、影も形も無い。
結局その島は発見されないまま終わった。
やがて人々はその島を”神”が住まう島と考え、神の怒りを恐れて島の捜索をやめた。
だが“神の島”を見つけた者は、生涯幸運に恵まれるとさえ言われた。
最初に世界にこの島を公表した漁師は高額当選のくじで、巨額の富を得たからだ。
―*―
カイドウ家本邸。
ユイは青い私室で、ミカゲの独白を聞いていた。
その間、Mathewはミカゲが持参したカザン・カードに触れている。
カザム教では、カザン・カードの意味が重要な意味を持つそうだ。
細長いカードには様々な数字が書かれたカードが24枚ほどある。
例えば「2」は、同じで異なる存在が一つになるという意味合いを持つ。
そして「0」は、全ての始まり。では「8」は――。
Mathewは、本を片手にカードを静かに見つめていた。
その間、ミカゲはユイの質問に答えていた。
あなたについてと、カザム教について知りたいと、ユイがミカゲに告げたからだ。
ミカゲが語り始める。
そのすべては、誰も知らない“世界”について。
このアゼリアに守護者がいることを、彼が知ったのは4歳の時だった。
当時は違う名前を持っていた、マガミ家一族の末端に位置する家庭の子供だったそうだ。
“先代のミカゲ”によって選ばれるまでは。
”君が新しいミカゲ・カイ・マガミだ”
元々の名前にミカゲという名前が上書きされた瞬間だった。
それ以前の名前も一切の因果も消去された。
両親はあっさりと彼を手放し、他のリージョンに移り住んだらしい。
「子供の頃に継承されて良かったよ。名前も役割も当たり前で育つ方が楽だからね」
ユイはただ黙って聞いていた。
腕に抱いたユーリだけは、語り部であるミカゲの赤紫色の目をまっすぐに見つめていた。
「ユーリ・カイ・リア・カイドウ……僕の正式な主……。本物の、綺麗な紫色の目だね」
元々ミカゲの目は深緑色だったそうだ。
それをわざわざ成人してから赤紫色に変えたのは、先代のミカゲが亡くなったからだ。
その瞬間から彼は“ミカゲ・カイ・マガミ”となった。
ユイは素朴な疑問を口にした。
どうしてあなたはミカゲに選ばれたのか、と。
すると“ミカゲ・カイ・マガミ”を名乗る存在は、ある特異な能力を持つからだという。
この能力は世界の守護者によって与えられたもの。
これにより“ミカゲ・カイ・マガミ”は、世界の守護者の“御使い”となる。
「マガミ家には『表』と『裏』の当主がいる。僕は『表』の当主なんだ」
『裏』のマガミ家当主は、ある場所から動くことが出来ない。
だから『表』のマガミ家当主が必要なのだという。
『裏』のマガミ家当主、つまりは世界の守護者。
カザム教の、過激派組織”グライゼル”が狂信するという、“神”シュゼルト。
そのワードの謎を一つ一つミカゲに教わる。
世界の守護者こそグライゼルが信じる“神”であるということがわかる。
カザム教における“神”シュゼルト。
それが世界の守護者であるが――。
ミカゲはこの“神”は最初から“神”であることを放棄しているという。
「守護者がこのアゼリアに存在してから数千年余り。長い歴史の中で彼は一度も自ら“神”を名乗ったことはない。彼は観測者であり、世界を守護する者に過ぎない」
「……神ではないのに、神として崇められるようになってしまったということ?」
「そうだよ」
守護者はただ世界を守護するために、観測を続け、存在している。
世界の中心にあるといわれる“世界樹”の傍で。
数千年に及ぶ年月は現在もなお続いている。
そう考えるだけでユイは眩暈を感じ、自身が踏み込んだ領域の重圧に押しつぶされそうになった。
