リージョンN、H市。カイドウ家の大病院。
緑豊かな中庭。
水飛沫を空に向かって押し上げる噴水。
ーーそこは光射す穏やかで優しい中庭。
初めて彼女に会った時、ユイは彼女が怖かった。
銀色の髪は、"あの時"を思い出してしまうから。
同じ時間、同じ場所で4度目に会った時、
ユイは彼女に名前を聞いた。
「わたくしは……レイ……」
小さな、消えてしまうような声。
レイは、幼馴染みのレイラによく似ていた。
髪や目の色が違うだけで、うり二つといってもよかった。
だから怖いとはいえ、彼女が気になったのかもしれない。
この綺麗なお人形のような少女が笑った時の顔が。
「あなたは?」
「ユイ、だよ」
ユイがそう答えた時、レイの紫が大きく揺れた。
そして泣きそうな声で、
「……ごめんなさい」
と繰り返す。
それが何を指すのか、ユイにはわからない。
ただ哀しそうに、苦しそうに、言葉を絞り出していた。
ユイはレイも自分と同じなのだろうかと思った。
ーーユイとレイ。
名前が似ているだけではなく、抱える苦しみがあるのも一緒のような気がした。
「友達になろうよ」
気がつくとユイはそう言っていた。
たったそれだけなのに、レイは泣き出した。
正直、驚きはした。
しかしどれほど辛い目にあったのだろうか、
そう思ったらユイも涙が止まらなくなった。
2人並んで声をあげ、ただ泣いた。
レイは言った。
「わたくし、ユイとお友達になりたい」
お互い涙でくしゃくしゃな顔、
それでも不器用に笑い合った。
リージョンNでは昔から、ふたりで約束をする時、お互いの小指を絡める風習があった。
ユイとレイがこの風習で誓ったのはたった一つだ。
「大人になってもずっと友達でいよう」
レイ曰く、子供の頃の友情は大人になっても続くことは稀だという。
だからこそこの友情が壊れることなく続きますように、と。
その願いはしっかりとユイの心に刻まれた。
レイと中庭で会うようになってから7日目。
レイは『もう会えないかもしれない』と告げた。
それを聞いたユイは、
”四葉のクローバーを一緒に探そう”
そう、提案する。
ユイはレイの四葉のクローバーを探し、レイはユイの四葉のクローバーを探した。
中庭を歩き回る2人。
程なく、ユイはレイの四葉のクローバーをすぐに見つけ、レイに渡した。
しかし、レイの方は一向にみつからない。
病院内の探せる場所はほとんど探した。
そのうち見つかるよとユイは気にしていない素振りを見せた。
しかしレイは「もう時間がないの」と悲しそうに言うのだ。
ユイはレイが退院する日が近いのだろうと思った。
ただユイはレイを安心させたかった。
「約束を思い出せるなら、なんでもいいの。大事なのはモノじゃない」
そして翌日。レイは、二つのクローバーをもってきた。
一つは、ユイがレイに送った四つ葉のクローバー。クリスタルに封じ込められている。
そして、もう一つはその四つ葉のクローバーを複製したレプリカだ。
それがユイの四葉のクローバーになる。
中庭で見つけた本物と、それを複製した偽物ーーいや。
重要なのはそこではない。
二人にとって、それが互いに相手を想ってのものであること。
そしてそれが、まぎれもなく“友情の証”だということ。
会えなくなっても私達は。
ーー友だ。
―*―
これがユイにとってレイとの思い出のすべて。
レイから四葉のクローバーを貰った翌日、ユイは退院することになった。
レイに別れの挨拶をと思ったのにあの中庭を訪れても、もうレイには会えなかった。
看護師に聞いても、この病院に銀髪の少女の患者は居ないと言う。
儚く目の前から消えてしまったレイ。
ユイにとってレイは大事な友達だったはずなのに、
いつしかユイはレイを忘れてしまっていた。
銀髪のルシー・フェルドの存在と共に。
置き去りにした時間を取り戻した今は、確信がある。
「また、会える」
そう思うのは、ユイの願いでもある。
偽物の四葉のクローバー。
ユイにとっては、それは今でも壊れることのない”友情の象徴”なのだ。
緑豊かな中庭。
水飛沫を空に向かって押し上げる噴水。
ーーそこは光射す穏やかで優しい中庭。
初めて彼女に会った時、ユイは彼女が怖かった。
銀色の髪は、"あの時"を思い出してしまうから。
同じ時間、同じ場所で4度目に会った時、
ユイは彼女に名前を聞いた。
「わたくしは……レイ……」
小さな、消えてしまうような声。
レイは、幼馴染みのレイラによく似ていた。
髪や目の色が違うだけで、うり二つといってもよかった。
だから怖いとはいえ、彼女が気になったのかもしれない。
この綺麗なお人形のような少女が笑った時の顔が。
「あなたは?」
「ユイ、だよ」
ユイがそう答えた時、レイの紫が大きく揺れた。
そして泣きそうな声で、
「……ごめんなさい」
と繰り返す。
それが何を指すのか、ユイにはわからない。
ただ哀しそうに、苦しそうに、言葉を絞り出していた。
ユイはレイも自分と同じなのだろうかと思った。
ーーユイとレイ。
名前が似ているだけではなく、抱える苦しみがあるのも一緒のような気がした。
「友達になろうよ」
気がつくとユイはそう言っていた。
たったそれだけなのに、レイは泣き出した。
正直、驚きはした。
しかしどれほど辛い目にあったのだろうか、
そう思ったらユイも涙が止まらなくなった。
2人並んで声をあげ、ただ泣いた。
レイは言った。
「わたくし、ユイとお友達になりたい」
お互い涙でくしゃくしゃな顔、
それでも不器用に笑い合った。
リージョンNでは昔から、ふたりで約束をする時、お互いの小指を絡める風習があった。
ユイとレイがこの風習で誓ったのはたった一つだ。
「大人になってもずっと友達でいよう」
レイ曰く、子供の頃の友情は大人になっても続くことは稀だという。
だからこそこの友情が壊れることなく続きますように、と。
その願いはしっかりとユイの心に刻まれた。
レイと中庭で会うようになってから7日目。
レイは『もう会えないかもしれない』と告げた。
それを聞いたユイは、
”四葉のクローバーを一緒に探そう”
そう、提案する。
ユイはレイの四葉のクローバーを探し、レイはユイの四葉のクローバーを探した。
中庭を歩き回る2人。
程なく、ユイはレイの四葉のクローバーをすぐに見つけ、レイに渡した。
しかし、レイの方は一向にみつからない。
病院内の探せる場所はほとんど探した。
そのうち見つかるよとユイは気にしていない素振りを見せた。
しかしレイは「もう時間がないの」と悲しそうに言うのだ。
ユイはレイが退院する日が近いのだろうと思った。
ただユイはレイを安心させたかった。
「約束を思い出せるなら、なんでもいいの。大事なのはモノじゃない」
そして翌日。レイは、二つのクローバーをもってきた。
一つは、ユイがレイに送った四つ葉のクローバー。クリスタルに封じ込められている。
そして、もう一つはその四つ葉のクローバーを複製したレプリカだ。
それがユイの四葉のクローバーになる。
中庭で見つけた本物と、それを複製した偽物ーーいや。
重要なのはそこではない。
二人にとって、それが互いに相手を想ってのものであること。
そしてそれが、まぎれもなく“友情の証”だということ。
会えなくなっても私達は。
ーー友だ。
―*―
これがユイにとってレイとの思い出のすべて。
レイから四葉のクローバーを貰った翌日、ユイは退院することになった。
レイに別れの挨拶をと思ったのにあの中庭を訪れても、もうレイには会えなかった。
看護師に聞いても、この病院に銀髪の少女の患者は居ないと言う。
儚く目の前から消えてしまったレイ。
ユイにとってレイは大事な友達だったはずなのに、
いつしかユイはレイを忘れてしまっていた。
銀髪のルシー・フェルドの存在と共に。
置き去りにした時間を取り戻した今は、確信がある。
「また、会える」
そう思うのは、ユイの願いでもある。
偽物の四葉のクローバー。
ユイにとっては、それは今でも壊れることのない”友情の象徴”なのだ。
