カイドウ家の本邸の外れに父、タケルが愛用したVRルームがあるらしい。
父は忙しい合間に、ここでVRゲームをしていたらしい。
父との想い出もいろいろあったはずなのに、何も覚えていないのが少し寂しく思えた。
だからこそ興味を持って訪れてみたくなったのかもしれない。
先代当主であった父を知るために――。
「こちらはごく稀にタクマ様がお使いになる以外は、利用者が居ないのです」
そんなVRルームの管理者は、ユイの訪れをとても喜んだ。
部屋の真ん中に置かれたコクピット型VRモニター。
医療機器のような佇まいでありながら、軍事シュミレーターとハイエンド娯楽機が合体したような本格的なもの。
サイズ、電力、価格、保守、安全規格の全てが業務用スケールだ。
管理者の話によると、これはすべて父のこだわりなんだとか。
「まさか……オーダーじゃないよね?」
「最初はある企業様からの貸与だったんですが、後にタケルさまが買い取られたと聞いております」
床にはケーブルが這うように放射状に広がっている。
シートのポケットには説明書が置いてあったり、物理スイッチの非常停止ボタン。
座席の安全クッションのデザインが白いモフモフなのが完全に後付け感がある。
サイドテーブルにはカップホルダーが標準搭載だ。
そう言えば祖父トミオもサイドテーブルにカップホルダーを付けていた。
どこでも飲み物を飲む癖が父タケルにはあったのかもしれない。
「ちょっと座って動かしてみてもいい?」
「はい。起動の準備を行いますのでお待ちください」
マシューがVRコクピットを分析するかのように注意深くあちこちに目を向けている。
そしてある一点をしばらく見つめていた。
「マシュー?」
ユイが声を掛けるとマシューはまた忙しく目を動かし始めた。
多分珍しい物でもあったのだろうと、ユイはマシューの行動を気にしなかった。
「ユイ様、お待たせ致しました。いつでも起動が可能です」
「ありがとう」
ユイが説明書を閉じたその時――。
古びた紙のメモがスッと説明書から落ちた。
ユイが拾うと、それは赤子の写真。
所々折れ曲がり、よれよれではあったものの、
フィリア・オレンジを手に持って笑っているユイの姿だった。
「お父さん……」
ユイはその写真をそっと説明書に戻し、VRコクピットのシートに座る。
マシューはサイドチェアに座り込み、モニターを見つめた。
管理者がユイにゴーグルを渡す。
「こちらをご利用ください。起動の仕方は分かりますか?」
「それは説明書を読んでみる。あと、折角だからアゼレウス社のショールームに行きたいんだけど、どう行けばいいかな?」
「それでしたら、ホームに入られた後、アザリウムをお選びください。こちらはショッピングエリアになっております。6番街選択後、アゼレウス社をお選び頂ければ、乗り物が自動で送ります」
「分かった、行ってみます」
「かしこまりました、行ってらっしゃいませ」
説明書を片手にVRコクピットを起動させる。意外と難しくない。
ユイはゴーグルを付けて、現実の延長線にある別世界へ、ユイは意識を沈めた。
父は忙しい合間に、ここでVRゲームをしていたらしい。
父との想い出もいろいろあったはずなのに、何も覚えていないのが少し寂しく思えた。
だからこそ興味を持って訪れてみたくなったのかもしれない。
先代当主であった父を知るために――。
「こちらはごく稀にタクマ様がお使いになる以外は、利用者が居ないのです」
そんなVRルームの管理者は、ユイの訪れをとても喜んだ。
部屋の真ん中に置かれたコクピット型VRモニター。
医療機器のような佇まいでありながら、軍事シュミレーターとハイエンド娯楽機が合体したような本格的なもの。
サイズ、電力、価格、保守、安全規格の全てが業務用スケールだ。
管理者の話によると、これはすべて父のこだわりなんだとか。
「まさか……オーダーじゃないよね?」
「最初はある企業様からの貸与だったんですが、後にタケルさまが買い取られたと聞いております」
床にはケーブルが這うように放射状に広がっている。
シートのポケットには説明書が置いてあったり、物理スイッチの非常停止ボタン。
座席の安全クッションのデザインが白いモフモフなのが完全に後付け感がある。
サイドテーブルにはカップホルダーが標準搭載だ。
そう言えば祖父トミオもサイドテーブルにカップホルダーを付けていた。
どこでも飲み物を飲む癖が父タケルにはあったのかもしれない。
「ちょっと座って動かしてみてもいい?」
「はい。起動の準備を行いますのでお待ちください」
マシューがVRコクピットを分析するかのように注意深くあちこちに目を向けている。
そしてある一点をしばらく見つめていた。
「マシュー?」
ユイが声を掛けるとマシューはまた忙しく目を動かし始めた。
多分珍しい物でもあったのだろうと、ユイはマシューの行動を気にしなかった。
「ユイ様、お待たせ致しました。いつでも起動が可能です」
「ありがとう」
ユイが説明書を閉じたその時――。
古びた紙のメモがスッと説明書から落ちた。
ユイが拾うと、それは赤子の写真。
所々折れ曲がり、よれよれではあったものの、
フィリア・オレンジを手に持って笑っているユイの姿だった。
「お父さん……」
ユイはその写真をそっと説明書に戻し、VRコクピットのシートに座る。
マシューはサイドチェアに座り込み、モニターを見つめた。
管理者がユイにゴーグルを渡す。
「こちらをご利用ください。起動の仕方は分かりますか?」
「それは説明書を読んでみる。あと、折角だからアゼレウス社のショールームに行きたいんだけど、どう行けばいいかな?」
「それでしたら、ホームに入られた後、アザリウムをお選びください。こちらはショッピングエリアになっております。6番街選択後、アゼレウス社をお選び頂ければ、乗り物が自動で送ります」
「分かった、行ってみます」
「かしこまりました、行ってらっしゃいませ」
説明書を片手にVRコクピットを起動させる。意外と難しくない。
ユイはゴーグルを付けて、現実の延長線にある別世界へ、ユイは意識を沈めた。
