マシューは目を伏せ、まだ待機姿勢のままだ。
「待ってるとは言ったけどよ。そのルール無視な衣装のままで来たのかよ」
「演目作品のイメージを優先させただけだ。団長も許可した」
「なら良いけど、あんまり突っ走りすぎて事故るなよ?」
頷くヒロト。
眼鏡をかけていないヒロトと視線が合う。
澄んだ紫が少しだけ澱んでいる気がした。
「……恋人と来たとは思わなかった。邪魔してすまない」
「ん? 恋人? どうしてそうなるんだ?」
ユイはそんな彼に、少しだけガッカリする。
と同時に自分の思い込みを押し付けようとする態度に腹が立った。
「誤解です。勝手に決めつけないで」
ユイの言葉が静かな空間に響いた。
冷たい怒り。
向けられたヒロトだけでなくトオルも動きを止めた。
それまで待機中だったマシューが起き上がり、言葉を放つ。
「話は終わったようだな。ユイ、今日は宿をとったほうがいい。検索するか?」
「うん。……お願い」
ユイはヒロトとトオルに一礼する。
マシューはユイのバッグを咥え、ユイに渡す。
ユイが立ち去ろうと一歩を踏み出したとき。
「待って。俺もトオルもリージョンCに帰る。送るよ」
「……ごめんなさい。お気遣い嬉しいですけど、結構です」
冷たいユイの言葉があたりに響いたその時ーー。
「あー。この時間に歩くのはヤバいよ?」
トオルが慌ててユイを止める。
「どうして?」
「昔、このリージョンには過激派組織「グライゼル」の拠点があったんだ。嫌かもしれないけど一緒の方がーー」
ヒロトがユイにただ事実を話す。
しかしユイにとってはその単語は凶器だった。
「過激派組織……グライゼル……」
その単語を聞いた時、ユイの中で何かが揺れた。
銃の音、人の悲鳴。
広がる赤ーー、過去の悲惨な光景がユイに津波のように押し寄せる。
両腕を抱え、震えながらその場にうずくまるユイ。
「ユイ!」
マシューの声が遠ざかる。ヒロトもトオルの声も遠く消えていく。
ユイの全てが過去に引き込まれる。
忘れたいのに今なお鮮明に覚えている。
どんなに振り切っても背後から迫ってくる。
そんな忌まわしい記憶の全てが津波のようにユイに押し寄せた。
『……ヲ発見シタ。裁キヲ……』
アレはあの時。リエとユイを見てそう告げた。
『オマエ……タチ サエ……』
無機質に向けられる銃口。
『イナケレバ』
悲痛な叫びが辺りにこだました。
「待ってるとは言ったけどよ。そのルール無視な衣装のままで来たのかよ」
「演目作品のイメージを優先させただけだ。団長も許可した」
「なら良いけど、あんまり突っ走りすぎて事故るなよ?」
頷くヒロト。
眼鏡をかけていないヒロトと視線が合う。
澄んだ紫が少しだけ澱んでいる気がした。
「……恋人と来たとは思わなかった。邪魔してすまない」
「ん? 恋人? どうしてそうなるんだ?」
ユイはそんな彼に、少しだけガッカリする。
と同時に自分の思い込みを押し付けようとする態度に腹が立った。
「誤解です。勝手に決めつけないで」
ユイの言葉が静かな空間に響いた。
冷たい怒り。
向けられたヒロトだけでなくトオルも動きを止めた。
それまで待機中だったマシューが起き上がり、言葉を放つ。
「話は終わったようだな。ユイ、今日は宿をとったほうがいい。検索するか?」
「うん。……お願い」
ユイはヒロトとトオルに一礼する。
マシューはユイのバッグを咥え、ユイに渡す。
ユイが立ち去ろうと一歩を踏み出したとき。
「待って。俺もトオルもリージョンCに帰る。送るよ」
「……ごめんなさい。お気遣い嬉しいですけど、結構です」
冷たいユイの言葉があたりに響いたその時ーー。
「あー。この時間に歩くのはヤバいよ?」
トオルが慌ててユイを止める。
「どうして?」
「昔、このリージョンには過激派組織「グライゼル」の拠点があったんだ。嫌かもしれないけど一緒の方がーー」
ヒロトがユイにただ事実を話す。
しかしユイにとってはその単語は凶器だった。
「過激派組織……グライゼル……」
その単語を聞いた時、ユイの中で何かが揺れた。
銃の音、人の悲鳴。
広がる赤ーー、過去の悲惨な光景がユイに津波のように押し寄せる。
両腕を抱え、震えながらその場にうずくまるユイ。
「ユイ!」
マシューの声が遠ざかる。ヒロトもトオルの声も遠く消えていく。
ユイの全てが過去に引き込まれる。
忘れたいのに今なお鮮明に覚えている。
どんなに振り切っても背後から迫ってくる。
そんな忌まわしい記憶の全てが津波のようにユイに押し寄せた。
『……ヲ発見シタ。裁キヲ……』
アレはあの時。リエとユイを見てそう告げた。
『オマエ……タチ サエ……』
無機質に向けられる銃口。
『イナケレバ』
悲痛な叫びが辺りにこだました。
