ユイはゆっくりとその目を開く。
意識が途切れたかと思ったけど、それは一瞬。
同じだけれど別の自分が再構成されたかのような感覚。
扉は“境界”なのかもしれない。
ただ、ユイにはその場所には確かな既視感があった。
仮想空間アザリウムの、アゼレウス社のショールームでみた光景に近い。
ルシー・フェルド・ブルーの美しい青空。
自然な明るさの陽光。偽物に近い気がするけど、あたたかい。
本物とみまごうまかりの光。
その光を受けてゆらめき輝く清流は宝石そのものの美しさだ。
見渡す限りにシロツメクサが揺れる聖域の中央、
世界樹は純白の枝葉を広げ、穏やかな天光を吸い込む。
枝垂れる枝に咲く白い花は生命の祝福そのもの。
その荘厳な佇まいは、アゼリアの守護者・シュゼルトの姿を現しているような気がした。
さらにその根元を抱く鏡の様な池の水面が、何かとの境界線の様にもみえた。
これは、Mathewと皆既月食を見た時にユイが見たヴィジョンに近かった。
しかし……目の前に広がる光景は、言葉を失うほど圧倒的な存在感に溢れていた。
「これは……?」
「ここが世界樹……だヨウ」
サンが教えてくれる世界樹は。
この世界――アゼリアの核、“すべての情報が集う場所”と言われている。
カザム教においては、世界の守護者の“御元”とも言われていた。
穏やかな風が右から流れて来る。ユイの髪が一瞬だけ視界を奪う。
「Mathew!」
池の側にMathewが座っていた。
その周りにはひな鳥たちが群がっている。
銀髪の上には、一匹の黄色の小さなひな鳥がしっかりと陣取っていた。
「ユイ」
Mathewの驚いたような声が聞こえた。
その隣に頭の上にひな鳥を乗せ、眼鏡を掛けた茶髪の男性が座っている。
(彼が――トム?)
その姿にユイは懐かしさを感じた。
初対面のはずなのに、この感覚が何故なのかわからない。
トムはユイを見つめ、穏やかに微笑み、手招きする。
その仕草が、記憶の中のある人物と重なる。
(……まさか……)
いや、しかしそんなはずはない。
“彼”は既に3年も前に目の前で息を引き取った。
同じくしてサツキも共に。
それでも――。
少し色素の薄い黒い瞳。
目尻の笑い皺。
照れ隠しに少し肩をすくませる癖。
「大人になったね、ユイ」
その声。――トムは。間違いない。
目の前の彼は。
「……おじいちゃん!」
ユイの眼から涙が伝った。
トムに向かって走り出す。
いつだったかリエからアルバムを見せて貰ったことがある。
『ね、イケメンでしょ?』
『うん。RARUTOのトミーにそっくり!』
嬉しそうに二人で話したある日の想い出が蘇る。
トミオ・ケイ・イサキ。
まさにその人だった。
トムは、頭からひな鳥を降ろしてゆっくりと立ち上がる。
ユイはトムに抱き着いた。
トムは驚きながらも、泣きじゃくるユイを抱きしめ、片手でその頭を撫でた。
大きなタコのあるあたたかい手。
ユイが知るその手は確かにトミオのものだ。
その様子をMathewとサンが見守る。
ユイの嗚咽と、水音だけがその空間に響いた。
意識が途切れたかと思ったけど、それは一瞬。
同じだけれど別の自分が再構成されたかのような感覚。
扉は“境界”なのかもしれない。
ただ、ユイにはその場所には確かな既視感があった。
仮想空間アザリウムの、アゼレウス社のショールームでみた光景に近い。
ルシー・フェルド・ブルーの美しい青空。
自然な明るさの陽光。偽物に近い気がするけど、あたたかい。
本物とみまごうまかりの光。
その光を受けてゆらめき輝く清流は宝石そのものの美しさだ。
見渡す限りにシロツメクサが揺れる聖域の中央、
世界樹は純白の枝葉を広げ、穏やかな天光を吸い込む。
枝垂れる枝に咲く白い花は生命の祝福そのもの。
その荘厳な佇まいは、アゼリアの守護者・シュゼルトの姿を現しているような気がした。
さらにその根元を抱く鏡の様な池の水面が、何かとの境界線の様にもみえた。
これは、Mathewと皆既月食を見た時にユイが見たヴィジョンに近かった。
しかし……目の前に広がる光景は、言葉を失うほど圧倒的な存在感に溢れていた。
「これは……?」
「ここが世界樹……だヨウ」
サンが教えてくれる世界樹は。
この世界――アゼリアの核、“すべての情報が集う場所”と言われている。
カザム教においては、世界の守護者の“御元”とも言われていた。
穏やかな風が右から流れて来る。ユイの髪が一瞬だけ視界を奪う。
「Mathew!」
池の側にMathewが座っていた。
その周りにはひな鳥たちが群がっている。
銀髪の上には、一匹の黄色の小さなひな鳥がしっかりと陣取っていた。
「ユイ」
Mathewの驚いたような声が聞こえた。
その隣に頭の上にひな鳥を乗せ、眼鏡を掛けた茶髪の男性が座っている。
(彼が――トム?)
その姿にユイは懐かしさを感じた。
初対面のはずなのに、この感覚が何故なのかわからない。
トムはユイを見つめ、穏やかに微笑み、手招きする。
その仕草が、記憶の中のある人物と重なる。
(……まさか……)
いや、しかしそんなはずはない。
“彼”は既に3年も前に目の前で息を引き取った。
同じくしてサツキも共に。
それでも――。
少し色素の薄い黒い瞳。
目尻の笑い皺。
照れ隠しに少し肩をすくませる癖。
「大人になったね、ユイ」
その声。――トムは。間違いない。
目の前の彼は。
「……おじいちゃん!」
ユイの眼から涙が伝った。
トムに向かって走り出す。
いつだったかリエからアルバムを見せて貰ったことがある。
『ね、イケメンでしょ?』
『うん。RARUTOのトミーにそっくり!』
嬉しそうに二人で話したある日の想い出が蘇る。
トミオ・ケイ・イサキ。
まさにその人だった。
トムは、頭からひな鳥を降ろしてゆっくりと立ち上がる。
ユイはトムに抱き着いた。
トムは驚きながらも、泣きじゃくるユイを抱きしめ、片手でその頭を撫でた。
大きなタコのあるあたたかい手。
ユイが知るその手は確かにトミオのものだ。
その様子をMathewとサンが見守る。
ユイの嗚咽と、水音だけがその空間に響いた。
