空に月が出始めたとき、ギーヴはこの島の港に船を停めた。
ギーヴの話では港町のはずれに、トムの工房があるらしい。
「ユイ様、Mathew様。”マスター・トム”の指令によりお迎えに上がりました。僕はサン……だヨウ」
白い直径30センチほどの球体のボディ。
ツーと見た目は一緒のモフ球体だ。
ただ、サイズはツーの倍以上。
羽はなく、機械部分の手足もがっしりしている。
ウエディングドレス一式が入った箱を、長く伸ばした両腕で軽々持ち上げて桟橋を進む。
「ギーヴ様、お久しぶりです。また、渋くなりましたか……だヨウ」
「ほっとけ」
Mathewは黒い護衛用のスーツにちゃんと着替えていた。
彼曰く気に入っているらしい。
このモフモフAIドールの目がもう懐中電灯になっている。
照らす光量の範囲がとても広い。
歩く街灯と言ってもいいほどだ。
そんなわけでいろんな虫がサンに寄って来る。
サンは体中に虫を付けながら、先導して道を歩いた。
徒歩20分。海岸沿いを歩いて、島の反対側に着いたのではなかろうかというとき。
こぢんまりとした木製のロッジみたいな民家が見えてきた。
この家の内装はアザリウムにログインするHOMEのデザインそのものだった。
不思議な偶然に、ユイは驚く。
サンは足を使って器用に扉を開ける。
両手が塞がっているのだから仕方がないが、少しお行儀が悪い。
「細かいことは気にしないでください。……だヨウ」
ツーと比べるとサンは丁寧な言葉遣いをする。
Mathewの部屋は1階。
ユイの部屋は2階。
そう案内する。内部は意外と広いつくりだ。
暖炉があって、小さなモフモフAIドールが薪をくべていた。
サンよりは少し小さいが同じ形状。頭に角が生えているのが特徴だ。
「あ、おきゃくさんだヨウ? イチがキレイキレイするヨウ。ランドリールームに置いてヨウ」
「分かりました、兄さん。任せますね……だヨウ」
この角が生えたモフモフAIドールはイチと言うのだと、サンが教えてくれる。
サンいわく、イチが長兄で次兄がツー。サンは一番最後に誕生したAIドールらしい。
この可愛すぎるこのAIドール達は全て、トムという人物による作品なのだという。
そして肝心のトムは。
地下室にある工房で何かを作っていた。
「ますた、夢中になると何を言っても反応してくれないヨウ」
「ユイ様、Mathew様。夕食が出来るまでお部屋でお待ちください……だヨウ」
そう言ってサンはドレス一式の箱を持って何処かへ行ってしまった。
Mathewは手に持っていた青い陶器の和酒を、屈んでイチに渡す。
「ギーヴ船長からこれをトム氏に渡すように言われている。受け取ってくれないか?」
「あ~、レッドドラゴン! ますたの好物、好物! ありがとうだヨウ」
小さいのに重たい陶器の瓶が持てるらしい。
細い腕を伸ばして瓶を持ち上げ、嬉々として台所へ消えていくイチ。
その後をMathewとユイは追いかけた。
意外と広いキッチン。
カイドウ家のキッチンと構造が似ている。
規模は小さいながらも、共通点があった。
「あれれ? どうしたヨウ?」
イチが振り返り、目線をユイの高さに合わせるためキッチンの作業台に立った。
「ご飯をつくるなら手伝わせて。何もしないでお世話になるの、嫌なの……」
「ユイ。俺がやろう。ユイは少し休むべきだ」
「ううん、何かしていないと気持ちに整理付かないから……Mathewこそ休んでいて」
そこへサンが現れた。
両手には何か重そうな工具箱を抱えている。
「Mathew様、主が修理のため地下にお連れするようにと……だヨウ」
ユイはMathewを見上げ、女王ではなくただのユイの言葉で告げた。
「Mathew、お願い。行ってきて」
「……分かった」
サンの案内で階段を降りていくMathew。
その姿を少しだけ見送って、ユイはキッチンに戻る。
「ふむむー。ユイさん、なにを作る? 食材はいろいろあるヨウ」
「ホントだ」
冷蔵庫の中身にあった食材は様々だった。
その中でユイが選んだのは薄切りの肉と、芋。
「和酒に合う料理にしようと思う」
頭に浮かんだのは煮物、だ。
それを聞いたイチは、嬉しそうに飛び跳ねた。
それから2時間、イチとユイのクッキングが始まった。
ギーヴの話では港町のはずれに、トムの工房があるらしい。
「ユイ様、Mathew様。”マスター・トム”の指令によりお迎えに上がりました。僕はサン……だヨウ」
白い直径30センチほどの球体のボディ。
ツーと見た目は一緒のモフ球体だ。
ただ、サイズはツーの倍以上。
羽はなく、機械部分の手足もがっしりしている。
ウエディングドレス一式が入った箱を、長く伸ばした両腕で軽々持ち上げて桟橋を進む。
「ギーヴ様、お久しぶりです。また、渋くなりましたか……だヨウ」
「ほっとけ」
Mathewは黒い護衛用のスーツにちゃんと着替えていた。
彼曰く気に入っているらしい。
このモフモフAIドールの目がもう懐中電灯になっている。
照らす光量の範囲がとても広い。
歩く街灯と言ってもいいほどだ。
そんなわけでいろんな虫がサンに寄って来る。
サンは体中に虫を付けながら、先導して道を歩いた。
徒歩20分。海岸沿いを歩いて、島の反対側に着いたのではなかろうかというとき。
こぢんまりとした木製のロッジみたいな民家が見えてきた。
この家の内装はアザリウムにログインするHOMEのデザインそのものだった。
不思議な偶然に、ユイは驚く。
サンは足を使って器用に扉を開ける。
両手が塞がっているのだから仕方がないが、少しお行儀が悪い。
「細かいことは気にしないでください。……だヨウ」
ツーと比べるとサンは丁寧な言葉遣いをする。
Mathewの部屋は1階。
ユイの部屋は2階。
そう案内する。内部は意外と広いつくりだ。
暖炉があって、小さなモフモフAIドールが薪をくべていた。
サンよりは少し小さいが同じ形状。頭に角が生えているのが特徴だ。
「あ、おきゃくさんだヨウ? イチがキレイキレイするヨウ。ランドリールームに置いてヨウ」
「分かりました、兄さん。任せますね……だヨウ」
この角が生えたモフモフAIドールはイチと言うのだと、サンが教えてくれる。
サンいわく、イチが長兄で次兄がツー。サンは一番最後に誕生したAIドールらしい。
この可愛すぎるこのAIドール達は全て、トムという人物による作品なのだという。
そして肝心のトムは。
地下室にある工房で何かを作っていた。
「ますた、夢中になると何を言っても反応してくれないヨウ」
「ユイ様、Mathew様。夕食が出来るまでお部屋でお待ちください……だヨウ」
そう言ってサンはドレス一式の箱を持って何処かへ行ってしまった。
Mathewは手に持っていた青い陶器の和酒を、屈んでイチに渡す。
「ギーヴ船長からこれをトム氏に渡すように言われている。受け取ってくれないか?」
「あ~、レッドドラゴン! ますたの好物、好物! ありがとうだヨウ」
小さいのに重たい陶器の瓶が持てるらしい。
細い腕を伸ばして瓶を持ち上げ、嬉々として台所へ消えていくイチ。
その後をMathewとユイは追いかけた。
意外と広いキッチン。
カイドウ家のキッチンと構造が似ている。
規模は小さいながらも、共通点があった。
「あれれ? どうしたヨウ?」
イチが振り返り、目線をユイの高さに合わせるためキッチンの作業台に立った。
「ご飯をつくるなら手伝わせて。何もしないでお世話になるの、嫌なの……」
「ユイ。俺がやろう。ユイは少し休むべきだ」
「ううん、何かしていないと気持ちに整理付かないから……Mathewこそ休んでいて」
そこへサンが現れた。
両手には何か重そうな工具箱を抱えている。
「Mathew様、主が修理のため地下にお連れするようにと……だヨウ」
ユイはMathewを見上げ、女王ではなくただのユイの言葉で告げた。
「Mathew、お願い。行ってきて」
「……分かった」
サンの案内で階段を降りていくMathew。
その姿を少しだけ見送って、ユイはキッチンに戻る。
「ふむむー。ユイさん、なにを作る? 食材はいろいろあるヨウ」
「ホントだ」
冷蔵庫の中身にあった食材は様々だった。
その中でユイが選んだのは薄切りの肉と、芋。
「和酒に合う料理にしようと思う」
頭に浮かんだのは煮物、だ。
それを聞いたイチは、嬉しそうに飛び跳ねた。
それから2時間、イチとユイのクッキングが始まった。
