ユイが目を覚ましたとき、布団の上に小型の何かがちょこんと乗っていた。
「ぐもにん~! だよう」
その声は、幼く性別の判断が付かない。
直径15センチほどの球体のボディは白く、見た感じモフモフな綿毛だ。
ボディとフェイスは合体し、黒豆状のカメラアイが二つ並ぶ。
鼻はなく「w」を伸ばした口元。
機械的な蝙蝠羽根がぱたぱたと音を立てる。
間違いなくAIドールだ。
恐ろしくかわいく、愛らしい。しかし驚異的な性能を持つ……小悪魔?
小型のAIドールは、ユイの動きを予測して、パッと飛び立つ。
宙に浮くモフモフ球体から、機械構造が露出した手足がぴょこんと生えた。
その動きは本物の鳥のようにも思えた。
そしてAIドールはユイの眼を見て、照れて見せた。
「かわいい……」
「当然だよう。ツーは可愛いヨウだよう」
即答。そのアピールも可愛い。
ツボをダイレクトに刺してくる辺り確信犯。まるでミカゲ……。
そう思ったとき、ユイはミカゲを思い出す。
彼は、皆は、レイラは。無事なんだろうか?
いやいや、Mathewは。
「Mathew!」
ユイは勢いよくベッドを飛び出し、船室を出た。
廊下にある窓の奥に見えるのは水平線だ。
船内は少し肌寒い。
改めて自分の恰好を見ると、薄手のシャツしか着ていない。
ユイは軽く悲鳴を上げる。
ぱたぱたと飛びながら追いかけて来るAIドールが、
「彼なら無事だよう。それよりお洋服着るといいよう」
ツーの手にはカジュアルな装いの女性服。
動きやすくて、保温性に優れたものだ。
「あ、ありがとう。……あなたは?」
「ツー、だよう。……あなたは?」
ユイの言葉を学習して反復してくる。
首を傾げた子供の様な反応……。
ユイは成長したユーリを想像し、ツーに重ねて微笑む。
「ツー、私はユイ。ユイと呼んで?」
「ゆい、ゆいー。おなかすいてるよう?」
問いかけと同じタイミングでお腹の音が聞こえる。
ユイの顔が赤くなる。
「わかったよう、ごはんごはん、だよう」
ツーはぱたぱたとはばたき、どこかへ飛んでいった。
ユイは船室へ戻り、着替える。
ライトベージュのロングタイトスカート。
フードの付いた青いパーカー。
黒のインナーTシャツ。
黒のソックスと、黒のスニーカー。
「なんか、私の好みを正確に反映させてるコーデ、だ……」
靴とソックスはジャストサイズなのに、服は既製品なのかゆとりがあった。
タイトスカートだけはウエストが少しきつめだ。
「これはマズい。ダイエットしなきゃ……」
記憶が少しずつクリアになる。
Mathewとヘリで逃げて、海へ飛び込んで――
首にふれると下げた鎖がない。
ということはヒロトのファミリー・リングは。
「そうだった、諦めたんだ――」
自分のために、Mathewのために。
私はヒロトを諦めた。
「ごめん、ヒロト。ごめんね……」
最初から私はヒロトを選んでいなかった。
ヒロトを選んだつもりでいた。
“彼”を失わないようにするために、私の因果の中に巻き込んでしまった。
そうか。
だから私はあの時、答えられなかった。
神の幻影が見えたからでも、神の声で愛を歌われたからでもない。
もしそのまま「はい」と答えていたら。
それはきっと――。
「ゆいゆい、ギーヴがメシできたって言ってるよう」
「あ、うん」
「むむむ~。雨降りだよう? お腹空きすぎたよう?」
ぱたぱたと目の前で心配そうに見つめるツー。
可愛い。最強に可愛い……。
「目にゴミが入っただけだよう」
「ゆいゆい、ツーの真似はダメだよう。ぷぷぷ」
ツーはユイの頭の上にちょんと乗る。
気に入ったのか、ツーは暫くそこを定位置としたのだった。
「ぐもにん~! だよう」
その声は、幼く性別の判断が付かない。
直径15センチほどの球体のボディは白く、見た感じモフモフな綿毛だ。
ボディとフェイスは合体し、黒豆状のカメラアイが二つ並ぶ。
鼻はなく「w」を伸ばした口元。
機械的な蝙蝠羽根がぱたぱたと音を立てる。
間違いなくAIドールだ。
恐ろしくかわいく、愛らしい。しかし驚異的な性能を持つ……小悪魔?
小型のAIドールは、ユイの動きを予測して、パッと飛び立つ。
宙に浮くモフモフ球体から、機械構造が露出した手足がぴょこんと生えた。
その動きは本物の鳥のようにも思えた。
そしてAIドールはユイの眼を見て、照れて見せた。
「かわいい……」
「当然だよう。ツーは可愛いヨウだよう」
即答。そのアピールも可愛い。
ツボをダイレクトに刺してくる辺り確信犯。まるでミカゲ……。
そう思ったとき、ユイはミカゲを思い出す。
彼は、皆は、レイラは。無事なんだろうか?
いやいや、Mathewは。
「Mathew!」
ユイは勢いよくベッドを飛び出し、船室を出た。
廊下にある窓の奥に見えるのは水平線だ。
船内は少し肌寒い。
改めて自分の恰好を見ると、薄手のシャツしか着ていない。
ユイは軽く悲鳴を上げる。
ぱたぱたと飛びながら追いかけて来るAIドールが、
「彼なら無事だよう。それよりお洋服着るといいよう」
ツーの手にはカジュアルな装いの女性服。
動きやすくて、保温性に優れたものだ。
「あ、ありがとう。……あなたは?」
「ツー、だよう。……あなたは?」
ユイの言葉を学習して反復してくる。
首を傾げた子供の様な反応……。
ユイは成長したユーリを想像し、ツーに重ねて微笑む。
「ツー、私はユイ。ユイと呼んで?」
「ゆい、ゆいー。おなかすいてるよう?」
問いかけと同じタイミングでお腹の音が聞こえる。
ユイの顔が赤くなる。
「わかったよう、ごはんごはん、だよう」
ツーはぱたぱたとはばたき、どこかへ飛んでいった。
ユイは船室へ戻り、着替える。
ライトベージュのロングタイトスカート。
フードの付いた青いパーカー。
黒のインナーTシャツ。
黒のソックスと、黒のスニーカー。
「なんか、私の好みを正確に反映させてるコーデ、だ……」
靴とソックスはジャストサイズなのに、服は既製品なのかゆとりがあった。
タイトスカートだけはウエストが少しきつめだ。
「これはマズい。ダイエットしなきゃ……」
記憶が少しずつクリアになる。
Mathewとヘリで逃げて、海へ飛び込んで――
首にふれると下げた鎖がない。
ということはヒロトのファミリー・リングは。
「そうだった、諦めたんだ――」
自分のために、Mathewのために。
私はヒロトを諦めた。
「ごめん、ヒロト。ごめんね……」
最初から私はヒロトを選んでいなかった。
ヒロトを選んだつもりでいた。
“彼”を失わないようにするために、私の因果の中に巻き込んでしまった。
そうか。
だから私はあの時、答えられなかった。
神の幻影が見えたからでも、神の声で愛を歌われたからでもない。
もしそのまま「はい」と答えていたら。
それはきっと――。
「ゆいゆい、ギーヴがメシできたって言ってるよう」
「あ、うん」
「むむむ~。雨降りだよう? お腹空きすぎたよう?」
ぱたぱたと目の前で心配そうに見つめるツー。
可愛い。最強に可愛い……。
「目にゴミが入っただけだよう」
「ゆいゆい、ツーの真似はダメだよう。ぷぷぷ」
ツーはユイの頭の上にちょんと乗る。
気に入ったのか、ツーは暫くそこを定位置としたのだった。
