その聖堂は、360度ガラス張りの美しい空間だった。
スタッフの案内に従って新婦控室にメイド達と共に入る。
その入り口でMathewとユイは目が合った。
ユイに真っ直ぐに向けられるMathewのルシー・フェルド・ブルーの目。
緊張をほぐすような優しい視線。
ユイは頷き、室内へと入る。
そこから、女たちの戦いが始まった。
何しろ時間が迫っている。
その中でメイドたちは誰よりも美しい花嫁となるように、全力を注いだ。
その熱量たるや、一種のサウナのようだ。
「アンナ、ユイ様の左を支えて!」
「ミオン、ユイ様のネックレス何処!?」
「青い箱の中!」
長さのたりない髪は結い上げることが出来ない。
そこで敢えて降ろしたまま、ロングトレーンのマリアベールを付ける。
メイドたちの掛け声が連携のとれた挙動を生み出す。
あれよあれよという間に新婦メイクは進み、最高の花嫁が鏡の前に爆誕する。
「これ……本当に私? まるで別人じゃない!」
「別人なんかじゃないですよ! とても素敵です」
メイドたちはやり切ったという充実感に満ちた表情をしている。
彼女たち無しではこの姿はあり得なかった。
ユイは感謝を込めて微笑んだ。
「ユイ様、早速男性陣を呼びますね。目に物見せてやりましょう!」
張り切るミオン。
ユイはもう一度自分の姿を見つめた。
母ミユキが着たという純白のウェディングドレス。
エレガントで優美なデザインの中にロイヤルブルーをふんだんに重ねた。
白と透けて見える青のコントラスト。
首元には大粒の真珠が煌めく。
しかしヒロトに貰ったファミリー・リングだけはどうしても外せなかった。
無理を言って、鎖が見えても問題ないようにしてもらった。
万が一の場合。
Mathewがこのリングを頼りにユイを探せるようにするという目的も兼ねている。
ミカゲはヒロトのファミリー・リングをお守りとして持つことを拒絶しなかった。
むしろお守りは必要とさえ言ってくれる。
真意は分からないものの、とりあえず言葉通りに受け取る。
ミオンが部屋に戻ってくる。
「ユイ!」
その後をついて真っ先に入って来たのはタクマだった。
ユイの花嫁姿を見て、感極まったのか、もうぽろぽろ泣き出している。
普段服装を褒めることのないフジナミも、セキジも大絶賛してくれた。
「冗談抜きでお綺麗ですよ、ユイ様」
「素晴らしい。まさに女神の降臨」
沈黙を続けるMathew。
でも視線だけはユイから離れない。
AIドールの目にはユイの姿はどのように映るのか誰もが注目する中、Mathewは。
「女神アゼリアが現代に降りたと仮定した場合、それはただ眩しいと感じるのかもしれない。その眩しさの詳細は俺には言語化できないが……」
無表情で淡々と告げる言葉。
誰より大袈裟な表現。なのに不器用な説明口調。
まさにMathewだ。
「良かったですね! ユイ様。我々の神もガチで感動なさっているみたいですよ! 」
ミオンの言葉を受けて、ユイは初めて頬を赤らめる。
「皆、ほめ過ぎだってば……」
メイドの一人がミカゲの到着を知らせる。
そのミカゲが言った。
「打合せがあってさ、ユイが推していた彼らに来てもらったんだ」
暫くして黒のフロックコートを着たミカゲがユイの控室に入ってくる。
手にした大ぶりの清楚な白百合のブーケを、ミカゲは落としかけた。
「……綺麗だ」
演技にしてはあけすけだ。
しかし実際、その視線はユイに釘付けだ。
さらに呆けた表情が、僅かながらとはいえ上気しているとあっては……。
「ミカゲ様? おれらにも見せてくださいよ~」
「……ルーク。ミカゲ様を押すなって」
その声には聞き覚えがある。
ミカゲの後ろに居るのはまさか……。
「ミカゲ様、固まってしまいましたね。初めまして、ユイ様。RARUTOです」
そう一礼して微笑むのは、黒い髪と青い目のラウル。
その左薬指には、結婚指輪が光っている。
栗色の髪のトミーと、黒髪のルークも軽く一礼し、ユイに微笑む。
「うそ……、あなたは……ラウル? トミーとルークも!?」
ユイは両手で頬を包む。
あまりの衝撃に息が出来ない。
推しが居る空気を吸う……!?
そんな”奇跡”ってあるだろうか。
世界のRARUTOが、この婚姻式に来るなんて!
「やれやれ。……僕を置き去りにしないでくれる?」
苦笑するミカゲ。
婚姻式ではラウルが合唱団アルゼリスのソプラノ、レミと歌うという。
アルゼリスの合唱団のメンバーもユイのために駆けつけてくれた、という事実にユイの目が熱くなる。
「今日はお二人のために、皆で心を込めて歌います。どうぞ末永くお幸せに」
ラウル達はミカゲとユイの内情を知らない。
ただ純粋な想いでふたりを祝福しているのだ。
「ありがとうございます……今日は、よろしくお願いします」
ユイは優雅にカーテシーを行う。
まさに女王そのものの美しさに、RARUTOのエンジンがかかる。
「よっしゃ。気合入れていこうぜ。おれたちが最高の式にするぜ!」
「ユイ様に見とれて指揮を間違うなよ?」
「モチ! トミーやラウルもしくじるなよ?」
「任せろ。絶対成功させる」
「俺も全力で歌わせてもらう。レミさんと一緒に、ね」
RARUTOの明るいトークにユイは笑顔になる。
この時ミカゲの目が、赤紫から青を含んだ紫色に変化していることに――
ユイは気が付かなかった。
この時はまだ。
スタッフの案内に従って新婦控室にメイド達と共に入る。
その入り口でMathewとユイは目が合った。
ユイに真っ直ぐに向けられるMathewのルシー・フェルド・ブルーの目。
緊張をほぐすような優しい視線。
ユイは頷き、室内へと入る。
そこから、女たちの戦いが始まった。
何しろ時間が迫っている。
その中でメイドたちは誰よりも美しい花嫁となるように、全力を注いだ。
その熱量たるや、一種のサウナのようだ。
「アンナ、ユイ様の左を支えて!」
「ミオン、ユイ様のネックレス何処!?」
「青い箱の中!」
長さのたりない髪は結い上げることが出来ない。
そこで敢えて降ろしたまま、ロングトレーンのマリアベールを付ける。
メイドたちの掛け声が連携のとれた挙動を生み出す。
あれよあれよという間に新婦メイクは進み、最高の花嫁が鏡の前に爆誕する。
「これ……本当に私? まるで別人じゃない!」
「別人なんかじゃないですよ! とても素敵です」
メイドたちはやり切ったという充実感に満ちた表情をしている。
彼女たち無しではこの姿はあり得なかった。
ユイは感謝を込めて微笑んだ。
「ユイ様、早速男性陣を呼びますね。目に物見せてやりましょう!」
張り切るミオン。
ユイはもう一度自分の姿を見つめた。
母ミユキが着たという純白のウェディングドレス。
エレガントで優美なデザインの中にロイヤルブルーをふんだんに重ねた。
白と透けて見える青のコントラスト。
首元には大粒の真珠が煌めく。
しかしヒロトに貰ったファミリー・リングだけはどうしても外せなかった。
無理を言って、鎖が見えても問題ないようにしてもらった。
万が一の場合。
Mathewがこのリングを頼りにユイを探せるようにするという目的も兼ねている。
ミカゲはヒロトのファミリー・リングをお守りとして持つことを拒絶しなかった。
むしろお守りは必要とさえ言ってくれる。
真意は分からないものの、とりあえず言葉通りに受け取る。
ミオンが部屋に戻ってくる。
「ユイ!」
その後をついて真っ先に入って来たのはタクマだった。
ユイの花嫁姿を見て、感極まったのか、もうぽろぽろ泣き出している。
普段服装を褒めることのないフジナミも、セキジも大絶賛してくれた。
「冗談抜きでお綺麗ですよ、ユイ様」
「素晴らしい。まさに女神の降臨」
沈黙を続けるMathew。
でも視線だけはユイから離れない。
AIドールの目にはユイの姿はどのように映るのか誰もが注目する中、Mathewは。
「女神アゼリアが現代に降りたと仮定した場合、それはただ眩しいと感じるのかもしれない。その眩しさの詳細は俺には言語化できないが……」
無表情で淡々と告げる言葉。
誰より大袈裟な表現。なのに不器用な説明口調。
まさにMathewだ。
「良かったですね! ユイ様。我々の神もガチで感動なさっているみたいですよ! 」
ミオンの言葉を受けて、ユイは初めて頬を赤らめる。
「皆、ほめ過ぎだってば……」
メイドの一人がミカゲの到着を知らせる。
そのミカゲが言った。
「打合せがあってさ、ユイが推していた彼らに来てもらったんだ」
暫くして黒のフロックコートを着たミカゲがユイの控室に入ってくる。
手にした大ぶりの清楚な白百合のブーケを、ミカゲは落としかけた。
「……綺麗だ」
演技にしてはあけすけだ。
しかし実際、その視線はユイに釘付けだ。
さらに呆けた表情が、僅かながらとはいえ上気しているとあっては……。
「ミカゲ様? おれらにも見せてくださいよ~」
「……ルーク。ミカゲ様を押すなって」
その声には聞き覚えがある。
ミカゲの後ろに居るのはまさか……。
「ミカゲ様、固まってしまいましたね。初めまして、ユイ様。RARUTOです」
そう一礼して微笑むのは、黒い髪と青い目のラウル。
その左薬指には、結婚指輪が光っている。
栗色の髪のトミーと、黒髪のルークも軽く一礼し、ユイに微笑む。
「うそ……、あなたは……ラウル? トミーとルークも!?」
ユイは両手で頬を包む。
あまりの衝撃に息が出来ない。
推しが居る空気を吸う……!?
そんな”奇跡”ってあるだろうか。
世界のRARUTOが、この婚姻式に来るなんて!
「やれやれ。……僕を置き去りにしないでくれる?」
苦笑するミカゲ。
婚姻式ではラウルが合唱団アルゼリスのソプラノ、レミと歌うという。
アルゼリスの合唱団のメンバーもユイのために駆けつけてくれた、という事実にユイの目が熱くなる。
「今日はお二人のために、皆で心を込めて歌います。どうぞ末永くお幸せに」
ラウル達はミカゲとユイの内情を知らない。
ただ純粋な想いでふたりを祝福しているのだ。
「ありがとうございます……今日は、よろしくお願いします」
ユイは優雅にカーテシーを行う。
まさに女王そのものの美しさに、RARUTOのエンジンがかかる。
「よっしゃ。気合入れていこうぜ。おれたちが最高の式にするぜ!」
「ユイ様に見とれて指揮を間違うなよ?」
「モチ! トミーやラウルもしくじるなよ?」
「任せろ。絶対成功させる」
「俺も全力で歌わせてもらう。レミさんと一緒に、ね」
RARUTOの明るいトークにユイは笑顔になる。
この時ミカゲの目が、赤紫から青を含んだ紫色に変化していることに――
ユイは気が付かなかった。
この時はまだ。
