誰もが愛する国民的スターは私だけを溺愛する

 ――事務所じゃ、ない?

 事務所で顔合わせをして、名刺交換をして、資料を渡して――
 そんな流れを勝手に想像していた私は、完全に出遅れる。

「……事務所で顔合わせじゃないんですか」

 思わずそう口にすると、父は歩きながら答えた。

「本人と、まだ連絡が取れていない」

「え……?」

「話は通してある」

 社長が直々に家まで行く相手。
 考えなくても、それなりの人だ。

 車に乗り込むと、父が行き先を告げる。

 告げられた地名に、思わず息をのむ。

 そこは、芸能人御用達の高級マンションが立ち並ぶエリアだった。

 私はシートに深く座り直し、窓の外に流れる景色を見つめた。

 目的地に着き、車を降りた瞬間、唖然とする。

「……ここ?」

 思わず声が漏れた。

「そうだ」

 目の前にそびえ立つのは、夜の光を映して輝くタワーマンション。
 ガラス張りの外壁がきらきらしていて、存在感がすごい。