誰もが愛する国民的スターは私だけを溺愛する

「結衣がそんなんだから舐められてんだよ? ビシッて言ってやんないと」

「いいよ。言ったところでみんな変わんないだろうし」

「そもそも、あの社長が贔屓するなんて、あるわけないのにね」

 ――私のお父さんは、この事務所の社長だ。

 その事実だけで、周囲は勝手に答えを決めつける。
 努力も、積み重ねてきた時間も、最初からなかったことにされる。

 だから私は、“七光り”と呼ばれている。

「最初は気にしてたけど……もう慣れたから」

 自嘲気味に笑ってみせるのは、これ以上心が削れないようにするための、私なりの防衛本能だ。

 私は間違いなく、自分の実力でここに就職した。
 父もまた、私を特別扱いするような人じゃない。

 むしろ逆だ。

『お前は誰よりも厳しく見る』

 そう言われた日のことを、今でも覚えている。

 曲がったことが嫌いで、不公平を何より嫌う人だから。

 ――それでも。

 どれだけ胸を張っても、どれだけ真面目に働いても、
「社長の娘」という肩書きは、私の背中から消えてはくれなかった。