誰もが愛する国民的スターは私だけを溺愛する

「そういえば、結衣の担当してた人、もう辞めたんだっけ?」

 そんなことを思っていると美咲が思い出したよう言った。

「うん。契約満了で」

「じゃあ、次は誰につくんだろうね」

「んー……まだ決まってないみたい。少しは落ち着けるといいけど」

 そう答えたときだった。

 背後から、ひそひそとした声が聞こえてくる。

「白石さん、次は誰の担当もらえるんだろうね」

「どうせ、また社長からのコネでしょ」

「私たちの方が長く働いてるのにさ。私たちは下っ端ばっか担当させられて」

 背後から聞こえてくる声は、ひそひそというより、わざと耳に届くように放たれていた。

「いいよねー、七光りって」

 その言葉は、もう何度も聞いてきたはずなのに、やっぱり胸の奥に引っかかった。

 努力をしても、結果を出しても。
 最初に貼られるのは“社長の娘”というレッテル。

 私はただ、自分の力で認められたいだけなのに。

「また、あいつら!」

 美咲が箸を置き、勢いよく立ち上がる。

「ちょっと一言、言ってくるから」

「ま、待って、美咲!」

 私は慌てて美咲の腕を掴んだ。

「大丈夫だから......ね?」

 そう言いながら笑ってみせたけれど、本当は心がすり減っていた。