誰もが愛する国民的スターは私だけを溺愛する

 ……でも、よく考えれば当たり前だ。
 俳優なんて、演じるのが仕事なんだから。
 画面の中と素顔が違うなんて、むしろ普通。

 誰だって、仕事用の顔とプライベートの顔は別だろうし。

 わかってる、わかっているけど――

 (この人、めちゃくちゃ癪に障るですけど!)

「言っておくが、俺は女が嫌いだ」

 あまりにも唐突で、思考が一拍遅れた。

「……はい?」

 聞き返した私に構わず、一条さんは淡々と続ける。

「今後、必要以上に話しかけるな」

 (……ちょっと、待って)

 あんな恋愛ドラマとか出ておいて――

 (嫌い? 女が?)

 いや、別にそういう人もいるだろうし、深い事情があるのかもしれない。

 ――かもしれない、けど。

 (それを初対面の担当マネージャーに言う?)

 私は一瞬、言葉を探してから、にっこり笑った。

 営業用。
 完璧な仕事用スマイル。

「承知しました」

 自分でもびっくりするくらい、声は落ち着いていた。

「業務に必要な連絡のみ、簡潔に行いますね」