誰もが愛する国民的スターは私だけを溺愛する

「……はい」

 低くて、少し掠れた、眠たそうな声。

 ――え、この人……。

 ドアが開き、現れたのは、ラフな部屋着姿の男だった。
 無造作な髪、気だるげな目元。それなのに、隠しきれない存在感。

 画面越しで何度も見たはずの目が、今、現実でこちらを見ている。

 (……嘘。待って、待って、待って!)

 まさか、そんなわけ――

「一条さん。突然すまない」

 父のその一言で、最後の疑いが消えた。

 ―― 一条、玲央。

 頭の中で名前が反響して、思考が一瞬止まる。

 超人気俳優、一条玲央。

 (って、ことは……この人が私の新しい担当!?)

 思わず息を忘れて立ち尽くしていると、彼は軽く頭を下げた。

「すみません。昨日も遅くまで撮影だったもので……少し寝てました」

 テレビや雑誌で見る完璧な姿とは違う、気の抜けた声。

 (……ギャップがすごい)

 むしろ、そんなところに好感度が上がりそうだ。

「忙しい中、申し訳ない」

「いえ。わざわざ来ていただいて、ありがとうございます。どうぞ、中へ」