キミ想うほど強く

もう届かないと分かっているけれど、
それでも、つい聞いてしまう。

体調はどうですか?

今日、私はお仕事もなく、天気も良かったから、
本当に何十年ぶりにジョギングをした。
家の近くのダムの周りを。

風が冷たくて、空が藍くて、
たくさんのキラキラした光が眼鏡に反射して、
景色が色付いて見えた。

隣でキミが一緒に笑いながら走っているのを、
想像しながら……。

「疲れたねっ……」
そんな独り言を言った瞬間、ふっと我に返る。

横にキミはいなくて、
一人の自分を噛み締める。

キミと、もう少し話がしたかった。
下手な恋愛小説みたいに、
繋がる言葉を眺めていたかった。

でも、今さらそんなふうに思っても遅い。

繋がりは、知らない誰かの手によって切り取られてしまった。
さっきまで触れていたはずの糸は、
切られた瞬間、行き場を失い、
それぞれ別の方向へと揺れ始める。

もう、繋がることはないのかもしれない。
この先も、ずっと。

それで良かったのだと思う。
非リアルがリアルに影響を及ぼす、
その境界線を越える前で、糸は切られた。

現実の生活を壊すことなく、
終わりを迎えられたのなら、
それで良かったのだ。

それでも――。

キミと話した時間は、紛れもなく本物だった。
たくさんの笑顔と、
たくさんのドキドキと、
たくさんの感謝をもらった。

それは、ゼロにはできない。

キミがオススメしてくれた曲。
キミが美味しいと言っていたラーメン。
雪合戦の話をして、思わず驚いたこと。
「一緒にしたいね」と話したジョギング。

非リアルだったはずの出来事は、
頭の中でリアルな映像を結び、
私の中に根を下ろし、静かに輝いている。

だから、
きっとこれからも、
キミと過ごした時間は忘れない。

ジョギング後の疲れきった体から、ふっと力が抜けた。
さっきまで確かに寂しかったはずなのに、
不思議と、キミが近くにいる感覚があった。

温かくて、
どこか清々しい。

ふと空を見上げると、
澄んだ空が広がっていて、
世界全体がキラキラと輝いて見えた。

ああ、そうか。
この空は、
キミのいる私の知らない場所にも繋がっている。

同じ空の下で、
それぞれの時間を生きている。

だから少し切なくて、
それでも、幸せなんだと思う。

この空の下で、
キミの体調が少しでも回復していたらいい。

元気でいてね。