クロとシロと、時々ギン

「お、おう。そうだぞ。そうに決まってるだろ。他にどんな意味があるって言うんだ」

 私の言葉に即座に乗っかってきたシロ先輩に、白谷吟は揶揄いの手を緩めない。

「あれ〜? 史郎は覚えてないんじゃなかったの?」
「バカ、吟。お前は少し黙ってろ」

 いつも気だるげで愛想のないシロ先輩が、ここまで取り乱すなんて。白谷吟が揶揄いたくなる気持ちが少し分かる。
 思わずクスリと笑うと、シロ先輩にジロリと睨まれた。
 でも、耳を赤く染めてバツの悪そうな顔で睨まれても全然怖くない。私はニカリと笑みを深める。

「大丈夫ですよ、シロ先輩。よく分かっていますから。先輩が私をかわいがってくれていることは。でも、あれだけは本当にやめてくださいよ」
「なんだよ?」
「さっきも言ったじゃないですか。頭をグリグリ撫でまわすのですよ。髪がボサボサになるから、本当に嫌なんです」

 プクリと頬を膨らませると、シロ先輩に鼻で笑われる。

「っんだよ。そんなこと気にしなくたって……」
「うわ〜、史郎。そんなことって、デリカシーないなぁ。女の子は誰だってそういうの気にするんだよ。ねぇ、萩田さん?」
「そうですね。私だったら、ばっちりセットした日に髪をボサボサにされたら、それだけでテンションだだ下がりですね」

 なぜだか全員から非難され、シロ先輩はつまらなさそうにそっぽを向いた。

「わーったよ。俺が悪うございました。もうやんねぇよ」

 不貞腐れている横顔は、いたずらを咎められた男の子みたいで、いつもの大人ぶった顔とは違ってかわいい。
 そう思った瞬間、また心臓がドキドキと音を立て始めた。

「あの、先輩。グリグリされるのは困りますけど、私、ポンポンは好きですよ」

 拗ねている先輩に声をかけると、シロ先輩はびっくりしたように目を丸くしてこちらを向いた。

「はぁ?」
「だ、か、らぁ、頭ポンポンはしてくれて大丈夫ですよ!」

 私はサッとシロ先輩の手を取り、自分の頭の上にポンと乗せた。
 シロ先輩はされるがまま、パチパチと瞬きを繰り返し、口をポカンと開けたまま固まっている。
 この間抜け顔も案外好きだったりする。
 そんなことを思いながら内心ニンマリしていると、笑いを極限まで堪えたような白谷吟の声がした。

「今日は随分と大胆だね。矢城さん」