クロとシロと、時々ギン

「文通って……まさか同じクラスの男子と交換日記……なんてオチじゃないだろうな」

 そう言ってシロ先輩はじっと私を見つめてくる。
 いつも通りの落ち着いた目なのに、どこか探るような色が混じっている気がした。

「もう、何なんですか。シロ先輩まで」

 妙に真剣な態度に戸惑う。
 何とか話を逸らそうとするが、二人とも引く気配がない。
 この状況を作った白谷吟を睨んでみるが、彼は気にも留めず平然と笑っているだけだ。
 諦めムードで溜息をついたところに、白谷吟がまた爆弾を落とす。

「でも、交換日記っていうのは、当たらずも遠からずって感じだよねぇ」

 愉快そうに笑う白谷吟。
 シロ先輩と萌乃は驚いた顔で同時に私を見る。
 私は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、慌てて首を横に振った。

「いや、あの……メ、メモのやり取りをしてただけだから」

(何これ。何の罰ゲーム?)

 頭の中で疑問がぐるぐる渦巻き、羞恥心で体が熱くなる。
 酔っているせいもあるかもしれない。
 とにかく、この状況から逃れたい。しかし私の願いとは裏腹に、萌乃の興味は止まらない。

「へー、どんな内容の交換日記だったんですか?」
「だから、交換日記じゃないから。本当にちょっとしたやりとりだったの。今日の体育が嫌だったとか、ピーマン残して親に叱られたとか、そんな些細な日常の愚痴みたいなものを書いていただけなの」

 私の説明に、萌乃は不満げに頬を膨らませる。本当にそれだけなのかと訴えるように白谷吟を見る。
 しかし白谷吟は、涼しい顔でニコニコ微笑むだけ。この人のマイペースぶりには感服するしかない。
 その隣で、いつの間にか黙り込んだシロ先輩は、顎に手を当てて何か考え込んでいるようだった。
 萌乃を諦めさせるため、私は仕方なく続きを話す。

「子供の頃、私、大切にしていた物を落としちゃったことがあって。次の日探しに行ったら、少し高い位置に拾い上げて置いてあったの」
「誰かが拾ってくれたんですね」

 萌乃の言葉に、私は軽く頷く。

「そうなの。とても大切な物だったから、拾ってくれた人が誰か分からなかったけど、お礼が言いたくて……置いてあった場所にメモを残したの。“見つけました”って」