家族会議は、だいたい甘い

八月の終わり。
河川敷の花火大会の日、しんいちは朝から“戦”に出た。
場所取り係として。

「パパ、がんばって」
ここが握手してくる。
「よし。パパは今日、河川敷の王になる」
「おうさま、あせくさいよ」
いすみの一言が鋭い。

夕方、じいじとばあば、親戚たちが集まり、シートの上は小さな宴会場になった。
焼きそば、唐揚げ、枝豆、スイカ。
ここは親戚のお姉ちゃんに髪を結ってもらい、得意げに回る。

「みて!りぼん!」
「かわいい!」
褒められて、ここは頬を赤くする。
赤くするのは、花火の前から。

そして、夜。
最初の一発が空を割ると、ここは息を止めた。

ドン、と胸の奥に響く音。
遅れて、きらきらが降ってくる。

「…すごい」
小さな声が、波みたいに広がった。
周りの大人たちも、しばらく黙った。

花火が大きくなるたび、ここは怖がるかと思った。
でも、ここは耳を押さえながらも、目を離さなかった。

「こわい?」
いすみが聞くと、ここは首を振る。
「こわくない。ドキドキする」

その言葉に、しんいちは胸が熱くなる。
ドキドキを“見たい”と思えるのは、きっと強さだ。

帰り道。人混みの中で、ここは急に言った。
「みんなでみたから、うれしかった」
じいじが「そうだなあ」と笑い、ばあばが「また来年ね」と言う。
しんいちは、“来年”という言葉を、そっと手のひらに乗せた気がした。