家族会議は、だいたい甘い

七月の夕方、浴衣の帯を結ぶいすみの手元を、ここがじっと見つめていた。
しんいちは、浴衣に慣れない手つきで、帯がほどけないか三回確認する。

「パパ、かたち、へん」
「うるさい。これが“粋”だ」
「いき?いきって、いきもの?」
「……近いようで遠いな」

盆踊りの会場は、提灯が揺れて、屋台の匂いが混ざり合う。
ここは金魚すくいの前で固まった。

「とりたい」
「やってみる?」
いすみが聞くと、ここは小さくうなずく。
ポイを持つ手が震える。金魚はするりと逃げる。
一匹目で、ポイが破れた。

ここは泣きそうな顔で、でも泣かなかった。
唇を噛んで、しんいちを見上げる。

「…むずかしい」
「むずかしいな。でも、挑戦したのが一番えらい」
しんいちは屋台の人に頼んで、金魚の代わりに小さなスーパーボールを一つもらった。

「ほら。今日の“できた”」
ここはそれを握りしめて、少し笑う。
「まるい」
「うん、人生みたいだな」
「じんせいって、なに?」
「……丸いもの、だ」

踊りの輪に入ると、ここは見よう見まねで手を動かした。
手を上げて、下げて、横に。
少し遅れて、でも楽しそうに。

帰り道、りんご飴を頬張ったここが言う。
「ほっぺ、おもい」
「それは、ほっぺに幸せが詰まってるんだ」
「パパのほっぺ、いつも、しあわせ?」
「……そうだな(会社にも配布してほしい)」

夏は、音と匂いと、甘さで満ちていく。