夏空とヴァンパイア





 一時限目は理科室授業だった。

 移動教室なので座席を確認すると、晶の席は廊下側のテーブルだった。



「間に合ったかー」

「おー、ギリギリ」

「まだ始まんねーな」



 授業開始間際になって廊下に出ていた男子の一団がガヤガヤと教室に入って来た。

 視界が急に影になって、ガタリ、と椅子を引いて晶の前に昴が座った。

 その日はアルコールランプを使う実験だった。

 クラスメート達がランプを取ってしまったので、晶はランプを取れなかった。

 実験をしている友人達に手持ち無沙汰で、晶は前の席に居る昴を盗み見た。


 整った顔立ちにキュッと引き結んだ唇。よく見ると黒い目は透き通って強くてまっすぐで澄んでいて、ヴァンパイアの美しさと少し似ていた。


「西井」


 実験を進めていると、出し抜けに昴が言った。



「お前の名前、ショウって読むの?」

「……うん」

「ふーん」


 
 昴が言った。



「お前、いつも黒い服しか着ないけど、そんなに黒が好きなの?」

「ううん。」

「じゃあ違うの着な。見てて暗い。こっちまで気分が暗くなる。迷惑。」



 昴がランプにフタをして火を消すと、入れ違いに先生が実験を指示した。


「晶、マッチ取って。」


 ふいに名前を呼ばれて、晶はドキっとしたが、黙ってマッチを手渡した。