コンコン、とノックの音がして、晶は目を開いた。
晶は、両親が居ないので医務室に泊まる事になっていた。
横になったまま晶は耳を澄ました。
「まだ病状が安定していないから……」
「用があるんです」
先生の制止を無視して、カーテンを開けたのは昴だった。
「起きな」
そう言われて晶は体を起こした。
まともに目を合わせる前にパッチーンと音がして、昴が晶の頬を打った。
「この馬鹿!」
昴は怖い顔をして晶を睨む。
「ヴァンパイアなんか、珍しい話でもねーだろ!馬鹿じゃねえの?血を飲んだ相手を殺すわけでもないのに!」
「だって……」
「だってじゃない。ったく。」
昴は、ポケットからカッターを出していきなり腕に切りつけた。
赤い血が、たらりと一筋流れる。
「ほら」
「やめて」
「飲めよ!」
晶は目眩を覚えながら小さな声で言った。
「ヴァンパイアは危ないんだよ。も、もしかしたら昴くんを殺しちゃうかもしれない……」
昴は一瞬呆れた顔をした。
が、すぐまた怖い顔に戻った。
「言ったね。やってみろよ!」
その時突然ドアが開いた。
ドアから顔を出したのは晶の両親の代わりに連絡を受けて来た琥珀だった。
琥珀は晶から目を逸らし、冷たい目で昴を見た。
「晶、お友達ってこの人?」
「誰?こいつ」
「晶の友達、桐崎琥珀」
琥珀はそう挨拶してから晶に屈んだ。
パチっと軽い音がして琥珀が晶の頬を叩いた。
「いい加減にしな、晶。血がなんだって言いたいの」
琥珀が言った。
「……そいつ、死ぬところだったかもしれないんだ」
自分より親しい相手が、晶に居るなんて、考えたことがなくて、悔しくて、昴は無理に笑いながら言った。
「保護者が居るなんて知らなかったな」
琥珀は無視した。
「……死ねたら良かった。いつも死のうとしてるのに」
晶の言葉に、眉を吊り上げた昴に、琥珀が溜息をついて言った。
「キミは死ねないよ」
琥珀は晶を美しい飴色の瞳で見てから、目を逸らした。
「僕と一緒に生きて貰う」
琥珀はいつも微量の血を混ぜている、紅茶のボトルを静かにベッドに置いた。



