夏空とヴァンパイア




 給食の時間、晶のクラスは机を合わせない。
 調子が悪いから当たり前だが、晶はたった二口しか給食を食べなかった。

 食器を片付けようか迷っていると、昴がやって来て、空いていた晶の前の机に腰掛けた。
 一緒に男子の一団がいて、ガヤガヤ騒いでいる。

 昴はポケットからクッキーを取り出すと、口を左右に引っ張って、袋を開けた。

 昴が言った。


「晶、あーんして」


 晶は目を瞬いた。


「あーん。ほら早く」

 
 晶が小さく口を開けると、その口に、昴はクッキーを摘んで押し込んだ。


「餌付け。」


 昴が言った。



「お前は栄養取った方がいいよ。ガリガリじゃん。」

「昴、俺にもちょーだい」

「晶にやるために買った。こいつあんまり食わないから」

「西井がそんな気になるかあ?」



 友達の一人がはやす。


「別に。食わなすぎるからなだけ」


 昴はそっけなく言った。
 続けた。



「細い女の子嫌い。」

「……」

「太れ。肉つけなよ。」

「セクシーバディにして、やらしいこと考えてんな、昴。」

「そーゆーこと考えてんなよ、昴」

「はは。まあね。」



 晶が昴を見上げると、昴は怒り笑いした。


「嘘に決まってるだろ。」


 晶は、甘いクッキーを黙って食べた。


「ちゃんと食えよ。僕それお前のために買ったんだからな」


 晶の頭の中で、細い女の子嫌い、がリフレインした。