君に何度でも××をあげる



「ここ、だよね…?」


うちから徒歩十分くらいの距離のマンションと、先生からもらったメモを見比べる。

マンション名も同じだし、多分ここで合っているはず。

それにしても、随分と高級そうなマンションに住んでるんだな…。

高くそびえ建つマンションを見上げながら、思わず目を細める。

適当に買った、風邪の人にあげるようなスポーツドリンクやゼリーなんかが入ったビニール袋と、先生から預かったプリントの入ったクリアファイルを握りしめながらマンションの中に入る。

ちょうど配達の人が入っていくようで開けられた自動ドアから一緒に中に入り、エレベーターで上に上がる。

八階につき、805のプレートが貼られている部屋の前まで行くと、“渡良瀬”と書かれた紙がその下に貼られていた。


「家が近いからプリントを配りにきただけ。家が近いから…」


インターホンを押した後に言う言葉をシュミレーションしてから、いざインターホンに指を伸ばそうとすると、ガチャリと重たそうな玄関の扉が開かれた。

え、あれ?私、まだ押してないよね…?


「…え?姫ちゃん…?」


中から出てきたのは、黒い上着を着てマスクをした、体調が悪そうな渡良瀬くんだった。