きっと、夏のこと

「ねえ、移動教室一緒にいかない?」



イヤホンの音が急に近くなって、顔を上げた。

見慣れない顔だった。

少し間があって、
私は声を探すみたいにして言った。

「……ありがとう。」



廊下に出ると、
人の流れに押されて、自然と並んで歩く形になった。

さっきまで聞いていた音楽が、
まだ頭の奥に残っている。

もう鳴っていないのに、
リズムだけが遅れてついてくるみたいだった。

何を話せばいいのか分からなくて、
私は前だけを見て歩いた。



しばらくして、
隣から小さな声がした。

「....何、聞いてたの?」