きっと、夏のこと

高校二年生の初日。

新しいネクタイ。
クラス替え。
張り替えられた座席表と、形だけの係決め。

浮かれる声が教室を満たしていく中で、
私の名前だけが、まだどこにも居場所を見つけられずにいた。

黒板に向かって立つ、見覚えのない担任。
チョークが擦れる音が、
この一年の長さを、先に教えられたみたいで、
やけに長く続く。

その音を聞きながら、
私はなぜか、
「また一年が始まる」という事実よりも、
「また何も起こらない一年かもしれない」
という予感のほうを先に思ってしまった。

私の席は、前から三番目の窓側だった。

教室の真ん中でも、端でもない。
先生の声はちゃんと届くけど、
窓の外の空も、同じくらい近い。




片耳だけイヤホンをつける。




音楽が流れ始めると、
教室のざわめきは少しだけ遠くなる。



そのときはまだ、
この席から始まる夏が、
私の時間を、あんなふうに変えるなんて知らなかった。